ドイツに所在するドイツのローカル企業での働き方について、筆者自らの経験をもとに数回に分けてご紹介しています。
前回の、給与に関する記事はいかがでしたでしょうか。
前回4回目と今回5回目は、待遇面についてさらに焦点を当ててお伝えします。
今回は、特に休暇に関する話題に絞ってお伝えします。
※前回同様、ドイツのローカル企業での働き方と言っても、実際には様々な働き方や社風がありますので、今回お話しするのは一例であるということにご留意ください。
- ドイツにて、ドイツのローカル企業で働くことに興味のある方
- ドイツでの働き方に興味のある方
- ドイツでの生活に興味のある方
休息を重要視するドイツの企業
ドイツでは、有給休暇が年30日も!?
日本では、入社初年度の有給付与日数は最低年10日であると法律で定められています。
そして、勤続年数に応じて11日、12日、14日、16日、18日と増加していき、7年目には最低年20日分付与されることになっています。
もちろん、これは週5日が週所定労働日数の従業員の場合です。
週所定労働日数が4日以下等の条件で勤務している場合は、その分最低有給付与日数も少なくなります。
その一方で、ドイツの法律では、週6日勤務の場合、雇用主は有給休暇を最低年24日分付与しなければならないと定められています。
実際には、5日勤務している方が多いと思いますが、その場合は最低年20日の有給付与が義務付けられています。
つまり、初年度から20日分の有給休暇をもらうことができるわけです!
この時点で日本より圧倒的に多いのですが、実際には20日より多く有給を付与している企業が大半です!
ドイツで年20日しか有給を付与しない企業は、人材確保が非常に大変だよ…。
筆者は、仕事柄、ドイツの様々な企業の有給日数を見てきましたが、実際に年20日しか有給を付与していない企業にはまだ出くわしたことがありません。
実態としては最低でも年25日であり、年30日付与する企業も多くあります!
つまり、ドイツの大半の企業では、有給日数が年25日~30日となっています。
在独日系企業でも、30日付与している企業があるみたいだね!
勤続年数に応じた有給の最低日数は、ドイツの法律では定められていないようです。
しかし、勤続年数が1年増えるたびに1日ずつ増え、最終的には入社時の有給日数+5日程度まで増えていく企業もあります。
筆者が勤める企業もそのような仕組みを採用していて、勤続6年目では、有給日数が年30日を超えることになります。
また、ドイツでは、多くの社員が付与された有給をすべて使い切ります。
有給を申請・取得することで、同僚や上司から非難されることは日本と違い稀です。
筆者の勤める企業では、管理職の人も有給をほぼ全消化しているよ!
この日本の2倍近い有給休暇日数と有給の取得しやすさゆえに、ドイツでは夏や年末年始に長期で(2週間~4週間程度)旅行する人が多くいます!
ドイツの有給休暇に関する注意点
有給休暇の日数が多いドイツですが、注意しなければならない点もいくつかあります!
まず、ドイツでは日本よりも祝日が少ないという点です。
日本の祝日が年16日であるのに対し、ドイツは州によりますが年10日~14日です。
したがって、有給はドイツの方が多いのですが祝日は日本の方が多いため、単純にドイツでは日本の2倍休みがあるというわけではありません。
また、企業によっては、まとめての有給消化は基本的に最長2週間までといった制限が設けられていることもあります。
この制限は、顧客との関係性を維持するためといった理由によるものです。
ドイツの法律では、2週間までの有給連続取得は認める必要があるが、それ以上は断ってもいいことになっているよ!
さらには、多くの企業において、翌年の有給休暇取得予定をその前年の11月頃に提出する必要があります。
これは、経営者や上司が事前に社員の有給休暇取得予定を把握して、ビジネスに影響が出ないよう備えるため、そして取得希望日が多くの社員で被った場合に、早いうちに調整するためです。
もちろん、その年が来てから有給休暇を申請することも可能です。
しかし、特に夏やクリスマス前後、そして祝日を平日にはさむ週は、有給取得を希望する社員が多くいます。
そのため、その時期に対して後から有給取得申請をしても、他の社員が既に「予約」済みであり、申請が却下されてしまうことがよくあります。
有給取得希望日の提出を一旦締め切った後は、早い者勝ちなんだね!
したがって、ドイツでは、日本よりも早く、翌年の休暇予定や長期旅行について考える必要があります。
以前、筆者が11月中旬に日本に一時帰国した際も、その前年の11月には日本に滞在する期間を既に決めて有給取得予定を日単位で上司等に伝え、1月には航空券を購入していました。
1年も先の予定であったため、その間に何があるかわからず、正直航空券を買うことにも不安がありました。
しかし、このようなことをしている労働者が、ドイツにはたくさんいるのではないかと思います。
法律で保証されているドイツの傷病休暇
ドイツには、傷病休暇というものが用意されています。
日本でも外資系企業を中心に傷病休暇が存在していますが、日本では、病気の際にかなり無理して働いたり有給休暇を取得したりしている方も多いのではないでしょうか。
ドイツでは、傷病休暇というものが、企業ごとではなく法律で定められています!
病気やケガをして仕事をすることができない場合、有給休暇とは別に設けられている傷病休暇を使用して休みます。
企業ごとに決められた日数を超えて連続して傷病休暇を取得する場合には、Arbeitsunfähigkeitsbescheinigungと呼ばれる就労不能証明書を医師に発行してもらい、その企業の人事担当者などに提出する必要があります。
法律上は、雇用主と被雇用者の間で特段の取り決めがない限り、3日を超えて取得する場合にArbeitsunfähigkeitsbescheinigungの提出が必須と定められていますが、2日目や3日目の取得から提出必須の企業もあります。
その点については、雇用契約書上に明記されているはずなので、雇用契約書を自分で再確認するか、人事担当者や上司などに確認すると良いと思います。
さすがに、年30日など傷病休暇を頻繁に取得すると、周りから白い目で見られたりする可能性は否めません。
しかし、筆者の勤める企業でも、少ない人でも年2~3日、多い人では年20日程度取得しています!
この傷病休暇の存在のおかげで、将来かかるかもしれないインフルエンザや新型コロナに備えて有給休暇を残しておく必要がありません。
仮病を使って、この傷病休暇を悪用している方もいる人もいそう…(笑)
まとめ
- ドイツでは、年25日~30日分有給を付与している企業が多い
- 企業によっては、連続した有給消化の取得は最長2週間までといった制限が設けられていることもある
- 多くの企業では、翌年の有給休暇取得予定をその前年の11月頃に提出する必要がある
- ドイツでは、病気やケガが原因で一時的に働けない場合、有給休暇とは別に設けられている傷病休暇を使用して休む
- 傷病休暇を連続して使用する際は、雇用主へのArbeitsunfähigkeitsbescheinigungの提出が必要になる場合がある
日本人は、短い期間で慌ただしく様々な場所を訪れることが多い一方で、ドイツ人は、一か所に留まってのんびりすることが多いです。
このような両国における旅行時の時間の使い方の違いには、有給日数の差が影響していることでしょう。
もし、日本でもより多くの有給が付与され、容易に取得できる環境が整ったとしたら、ドイツ人のような一か所に留まってのんびりするタイプの旅行が流行るのかもしれませんね!
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