中世の町並み、緑豊かな丘陵、荘厳な教会、おとぎ話のようなお城…。
ドイツを代表する観光ルート「ロマンチック街道」は、その名の通り、心ときめく風景が連なる約350kmの夢の道です。
ヴュルツブルク(Würzburg)からフュッセン(Füssen)のすべてまたは一部を、車や電車、バスでゆっくり巡れば、ドイツの歴史・文化・自然の魅力を一度に味わうことができます。
今回は、このロマンチック街道沿いに位置する各町の見どころを順にご紹介します。
・ドイツ、特に南ドイツへの旅行を計画中の方
・ドイツの観光スポットやロマンチック街道に興味のある方
ロマンチック街道とは
ロマンチック街道(Romantische Straße)は、ドイツ南部に位置する観光ルートで、バイエルン州とバーデン=ヴュルテンベルク州をまたいで、ヴュルツブルク(Würzburg)からフュッセン(Füssen)まで約350kmにわたり続きます。
その名は1950年代に観光促進の一環として名付けられ、「ロマンチックな風景」と「中世のロマン」にちなんでいます。
この街道には、城壁に囲まれた町やバロック建築の宮殿、石畳の旧市街、アルプスの麓に広がる自然など、実に多彩な魅力が詰まっています。
ルートをたどると、まるで時空を旅しているかのような感覚になり、ドイツの奥深い文化と美しさに触れられるでしょう。
バスツアー、レンタカー、自転車などでの旅も人気で、近年はドイツ国内外の旅行者にとって「憧れのルート」として不動の人気を誇ります。
ヴュルツブルク(Würzburg)
ロマンチック街道の北の起点となるヴュルツブルク(Würzburg)は、フランケンワインの産地として知られ、美しいバロック建築と川沿いの景観が魅力的な町です。
特に有名なのが、世界遺産にも登録されている宮殿、ヴュルツブルク・レジデンツ(Residenz Würzburg)。
壮麗な天井画と豪華な内装は見事であり、特に巨大な天井フレスコ画が広がる階段の間(Treppenhaus)や金色に輝く鏡の間(Spiegelkabinett)は必見です。

さらに、マイン川にかかるアルテ・マイン橋(Alte Mainbrücke)からは、マリエンベルク要塞(Festung Marienberg)や川沿いのワイン畑を一望でき、散歩にも最適な場所です。
町の中心部では、ワインスタンドで地元の白ワインを気軽に楽しむこともでき、観光とグルメの両方が楽しめます。


ヴァイカースハイム(Weikersheim)
ヴュルツブルクから南へ進むと現れる小さな町、ヴァイカースハイム(Weikersheim)。
観光客の多い大都市に比べると静かな存在ですが、この町にあるヴァイカースハイム城(Schloss Weikersheim)は、まさに「隠れた名所」として注目されています。
16世紀後半まで増築と改築を繰り返して建てられたこのルネサンス様式の城は、精巧な内装と広大なバロック式庭園で知られています。
庭園には神話の登場人物の彫刻が点在し、まるで古代の物語の中を歩いているかのような気分にさせてくれます。
内部のツアーでは、当時の貴族の暮らしぶりや豪華なホールを見ることができ、意外にも見応え十分。
混雑も少ないため、のんびりとした時間を過ごすにはぴったりのスポットです。
ローテンブルク・オプ・デア・タウバー(Rothenburg ob der Tauber)
ローテンブルク・オプ・デア・タウバー(Rothenburg ob der Tauber)は、ロマンチック街道の中でも特に人気の高い町のひとつで、中世の姿をそのまま残す町並みが魅力です。
石畳の小道、木組みの家々、花で彩られた窓辺…。
まさにおとぎ話の世界に迷い込んだような気分になります。
城壁に囲まれた旧市街は、徒歩でゆっくり散策するのがオススメ。
プレーンライン(Plönlein)の絵葉書のような風景は、観光客に大人気の写真スポットです。

また、「クリスマスマーケットの町」としても知られ、年中営業しているクリスマスショップ「ケーテ・ヴォールファルト(Käthe Wohlfahrt)」も見逃せません。


フォイヒトヴァンゲン(Feuchtwangen)
フォイヒトヴァンゲン(Feuchtwangen)は、落ち着いた雰囲気の町で、観光客の喧騒から離れて、地元の暮らしや歴史を感じられる穴場的スポットです。
旧修道院を改装したロマネスク様式の教会「Stiftskirche Feuchtwangen」や、中世の面影を残す旧市街は、のんびり散策するのにぴったり。
特に夏に開催される野外演劇「Kreuzgangspiele」は地元の誇りで、歴史的な背景を舞台にした公演が多くの来訪者を魅了します。
小規模ながらも深みのある観光が楽しめる町です。
ディンケルスビュール(Dinkelsbühl)
ディンケルスビュール(Dinkelsbühl)は、ローテンブルクと並び称される中世の町で、観光客の数はやや少ないものの、その美しさは負けていません。
特に、見事に残された城壁や色とりどり家が連なる通りは、歩くだけで心が躍ります。

毎年7月には、三十年戦争時のエピソードを再現する「キンダーツェーヘ(Kinderzeche)」という大規模な祭りが開かれ、町中が時代衣装をまとった人々で賑わいます。
また、聖ゲオルク大聖堂(Münster St. Georg)やゼグリンガー門(Segringer Tor)など、歴史的建築物も多数点在。

観光の拠点となるインフォメーションセンターも充実しており、徒歩で町を一周するのもオススメです。

ネルトリンゲン(Nördlingen)
ネルトリンゲン(Nördlingen)は、隕石の衝突によってできた巨大なクレーター「リース・クレーター」に位置するユニークな町。
町全体がまん丸に城壁で囲まれており、塔の上から見るとその形がよく分かります。
特におすすめなのが、聖ゲオルク教会の塔「ダニエル」からのパノラマビュー。
町の中心から放射状に広がる通りとオレンジ色の屋根が見渡せ、感動的な景色です。

また、町の博物館では、隕石衝突にまつわる地質学的な展示もあり、自然科学好きにも興味深い内容です。

ハールブルク(Harburg)
ハールブルク(Harburg)は、山の上にそびえる中世の城「ハールブルク城(Burg Harburg)」が象徴的な小さな町です。
この城は、12世紀からほぼ原型をとどめているといわれる貴重な存在で、ガイドツアーで内部を見学することもできます。
小高い丘の上から見下ろす町の景色も美しく、緑豊かな自然と古城の組み合わせが絵になる風景を生み出しています。
ロマンチック街道らしい「中世ロマン」を静かに味わいたい方には、ぴったりの場所です。
ドナウヴェルト(Donauwörth)
ドナウヴェルト(Donauwörth)は、ドナウ川とヴェルニッツ川が交差する水辺の町で、中世から交通の要衝として栄えた歴史があります。
旧市街の中心にある「ライヒスシュトラーセ(Reichsstraße)」は、カラフルな建物が並ぶ美しい通りで、ゆったりとした時間が流れます。

また、町の外れには川沿いを中心に自然が広がり、サイクリングや散歩にぴったりのスポットも豊富。
歴史と自然、どちらも楽しめる町として、旅行の合間の小休憩にもおすすめです。

アウクスブルク(Augsburg)
アウクスブルク(Augsburg)は、ロマンチック街道最大の都市であり、2000年以上の歴史を持つ古都です。
古代ローマ時代にまでさかのぼるこの町は、金融都市としても名を馳せたフッガー家の本拠地でもあります。

観光スポットとして外せないのは、世界最古の社会福祉住宅といわれるフッゲライ(Fuggerei)や、壮大なアウクスブルク大聖堂(Augsburger Dom)、アウクスブルク市庁舎の黄金の間(Goldener Saal)など。
30万人の人口を抱える町の中心部には、カフェやショップも多く、散策にもぴったりです。

ロマンと歴史が交差するこの町は、歴史好きにも芸術好きにも楽しめる深みのある都市です。

ランツベルク・アム・レッヒ(Landsberg am Lech)
ランツベルク・アム・レッヒ(Landsberg am Lech)は、レッヒ川沿いに広がるカラフルで可愛らしい町。
バロック様式の市庁舎や絵本のような旧市街は、訪れる人々の心をつかみます。
町の中心にある広場では、週末にマーケットが開かれることもあり、地元の雰囲気を感じられる絶好のスポット。
レッヒ川沿いを歩けば、水音と共にのんびりした時間が流れます。
ロマンチック街道の中でも、隠れた宝石のような町としておすすめです。
シュタインガーデン(Steingaden)
シュタインガーデン(Steingaden)は、世界遺産にも登録された「ヴィースの巡礼教会(Wieskirche)」で知られる小さな町です。
この教会は、ロココ様式の最高傑作とも称され、その内部装飾の繊細さと優美さに、訪れる人は皆、言葉を失います。

美しい牧草地の中にぽつんとたたずむ教会は、アルプスを背景にした絶景ロケーション。
敬虔な信仰の場でありながらも、芸術的価値の高さから、世界中の観光客が足を運びます。
春から秋にかけては、周囲をハイキングやサイクリングで訪れる人も多く、静寂の中に心洗われるひとときを体験できます。
シュヴァンガオ(Schwangau)
シュヴァンガオ(Schwangau)は、あの有名なノイシュヴァンシュタイン城(Schloss Neuschwanstein)の麓に広がる村で、自然と歴史が融合した絶景スポットです。
青く澄んだアルプ湖や山々に囲まれ、のどかな牧草地と荘厳な城とのコントラストが目を引きます。

また、もうひとつの名所「ホーエンシュヴァンガオ城(Schloss Hohenschwangau)」も見逃せません。
王族たちが実際に過ごしたこの城は、ノイシュヴァンシュタイン城とは異なる温かみのある内装が特徴です。

村内には温泉施設「Königliche Kristall-Therme」もあり、旅の疲れを癒すのにもぴったりの立ち寄り先です。

フュッセン(Füssen)
フュッセン(Füssen)は、ロマンチック街道の終点を飾る町で、アルプス山脈の麓に位置する美しい風景が広がります。
バロック様式のザンクト・マンク修道院(Benediktinerkloster St. Mang)やその修道院を改装した博物館、そして美しいレッヒ川の流れが織りなす景観は、旅の締めくくりにふさわしい優雅さ。

町の中心部にはレストランやカフェが並び、ゆっくり散策するのに最適。
ここからノイシュヴァンシュタイン城やホーエンシュヴァンガウ城、さらにはテーゲルベルク山(Tegelberg)などへのアクセスも良好です。

また、レッヒ滝(Lechfall)や森の冒険センター ツィーゲルヴィース(Walderlebniszentrum Ziegelwies)など、アルプスの大自然を感じられるスポットも近くにあります。

ロマンチック街道の集大成として、そして静かで美しい時間を過ごせる場所として、ぜひ立ち寄りたい町です。

最後に
ドイツのロマンチック街道は、中世の面影を色濃く残す町々を結ぶ、美しさと歴史に満ちたルートです。
ヴュルツブルクからフュッセンまで、それぞれの町が個性豊かな魅力を放ち、訪れる人を惹きつけてやみません。
古城、石畳の通り、教会、美しい自然、そして心温まる人々との出会いが、旅をより深く思い出深いものにしてくれます。
ドイツの「ロマン」を体験するには、まさにうってつけのルートです。
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