仕事を探す際、履歴書(Lebenslauf)の作成は、非常に重要であり最初のステップでもあります。
筆者はリクルーターや人材コンサルタントとして、これまでに多種多様な業界や職種の人の履歴書を見てきました。
日本人の履歴書はもちろん、ドイツ人やその他の国籍の人たちの履歴書も数多く確認しました。
日本の履歴書とドイツの履歴書には大きな違いがあるため、日本からの転職者が履歴書の作成時に戸惑うことも少なくありません。
そこで今回は、ドイツで履歴書を作成する際に気を付けるべき点や、日本の履歴書との違いについて詳しく解説します。
- ドイツで働くことに興味のある方
- ドイツに長期滞在し、正社員として働きたいと考えている方
- ドイツで通用する履歴書の作成に興味のある方
ドイツの履歴書:フォーマットに決まりはない
まず、日本と異なり、ドイツの履歴書には決まったフォーマットが存在しません。
日本では多くの場合、履歴書のフォーマットがある程度決まっており、市販のテンプレートやオンラインでダウンロードできるものを使用することが一般的です。
また、そのフォーマットもしくは類似したフォーマットへの記入例も同封されていたり、インターネット上で簡単に見つけたりすることができます。
そのため、悪く言えば個性が出づらい履歴書となりますが、初めて履歴書を作成する方であっても簡単に記入できることでしょう。
一方でドイツでは、誰もが見たことあるような履歴書のテンプレートというのが基本的にありません!
パソコン等で使用できるツールを使って、履歴書のレイアウトから自分である程度作成します。
※履歴書作成に役立つツールについては、次の章を参照してください。
履歴書のデザインも自由で、非常に簡易的な履歴書を作成・提出する人もいれば、パンフレットのようにデザインに凝った履歴書を作成する人もいます。
ただし、デザインに凝り過ぎて読みづらくなってしまうのは避けましょう!
読み手が必要な情報をすぐに見つけられるよう、見やすく整理されたレイアウトが理想です。

視覚的に美しくても、読み手が重要な情報を簡単に見つけられなければ意味が無いし、デザイナー職等でなければ、履歴書のデザインによる視覚的な美しさは特別求められないよ!



つまり、情報が整理・網羅されていて見やすければ、凝った履歴書でなくても問題ないということね!
履歴書作成に役立つツール
Microsoft Word
Microsoft Wordは、世界中で最も広く使われている文書作成ソフトの1つで、履歴書作成にもよく使用されます。
Wordでは、シンプルな履歴書からデザイン性のあるものまで、様々なテンプレートが提供されており、フォーマットを自由にカスタマイズできます。
また、書式やフォント、段落の調整がしやすいため、プロフェッショナルな見栄えに仕上げることが可能です。
さらに、PDF形式での保存も容易にできるため、提出にも便利です。
Google Docs
Google Docsは、Googleの無料オンラインツールで、Wordに似た操作感で履歴書を作成できます。
クラウド上で作業ができるため、インターネット接続さえあればどこからでも編集可能です。
Google Docsにも多くの履歴書テンプレートがあり、シンプルかつ直感的に使えるのが特徴です。
共同編集機能を使えば、第三者にアドバイスをもらいながら履歴書を作成することもできます。
また、Google DocsもWordと同様に、PDF形式での出力が可能です。
Europass
Europassは、欧州連合(EU)が提供する無料の履歴書作成ツールで、ヨーロッパ全域で広く使用されています。
特に国際的な応募やヨーロッパでの仕事探しをする場合、統一されたフォーマットで作成できるため便利です。
言語能力やスキルが欧州標準に基づいて記載でき、ユーザーは学歴や職歴などを簡単に入力するだけでプロフェッショナルな履歴書が完成します。
国際応募を考えている方に特におすすめです。
Canva
Canvaは、デザイン重視のオンラインツールで、履歴書作成にも使えます。
豊富なテンプレートと直感的なインターフェースにより、デザインスキルがなくても視覚的に魅力的な履歴書を簡単に作成できます。
特に、クリエイティブな職種を目指す人に最適で、レイアウトや色、フォントを自由にカスタマイズできます。
無料でも多くの機能が利用可能で、PDF形式でのダウンロードが可能です。
Zety
Zetyは、オンラインでプロフェッショナルな履歴書を短時間で作成できるツールです。
テンプレートが豊富で、具体的なアドバイスやサンプルも表示されるため、履歴書作成に不慣れな人でも安心して使えます。
履歴書作成に加え、カバーレターも一緒に作成できるため、応募書類の統一感が得られます。
基本機能は無料で使えますが、ダウンロードには有料プランが必要です。
ページ数に制限はない
日本の履歴書では、通常見開き片面1ページや、パソコンで作成する場合でも1ページにまとめることが主流です。
限られたスペースに経歴を収めるため、必要最小限の情報しか書かないこともあります。
しかし、ドイツでは履歴書のページ数に特に制限はなく、職歴が豊富な人の場合は2ページ以上の履歴書が普通です。
むしろ、1ページでは情報が少なすぎると感じられることもあります。
実際、2ページから3ページ程度の履歴書が主流であり、重要な情報を網羅的に記載することが大切です。
筆者は、過去に、7ページの履歴書や、16ページにわたる履歴書も見たことがありますが、それは明らかに過剰です。
情報が多すぎると、読み手は重要な情報を見つけにくくなり、読む気も失ってしまいます。



適切なボリューム感を意識しよう!
履歴書を書く際に使用すべき言語
ドイツで履歴書を作成する際、ドイツ語と英語のどちらを使用すべきかは、応募するポジションや企業の性質によって異なります。
一般的なルールとしては、以下のポイントを参考にして言語を選択するのが効果的です。
応募するポジションの必須言語を考慮
まず、応募するポジションでドイツ語が必須とされている場合は、履歴書もドイツ語で作成するのが最適です。
これは、あなたがドイツ語で仕事をこなせることを示す重要な証拠となり、雇用者に好印象を与えます。
ドイツ語で働く意欲やスキルがあるなら、自分の能力を正しく伝えるためにも、ドイツ語の履歴書は欠かせません。
しかし、無理にドイツ語の履歴書を作成することは避けるべきです。
もし、ドイツ語がまったく、もしくはほとんど話せないのであれば、英語の履歴書を提出する方が良いです。
ドイツ語の履歴書を提出してしまうと、面接や日常業務でドイツ語のスキルを期待される可能性があります。
自分の実力以上にドイツ語ができると思わせてしまうと、面接時や入社後に誤解や問題が生じる可能性があります。
応募する企業や業界の特性を考慮
次に、応募する企業や業界の特性も考慮に入れるべきです。
例えば、多くの国に拠点を持つインターナショナルな企業の場合、社内の公用語が英語であることも多いです。
このような企業では、英語でのコミュニケーションが日常的に行われるため、英語の履歴書で応募することが推奨されることも少なくありません。
特に、国際的な取引やプロジェクトに関与するようなポジションでは、英語が主流となることが予想されます。
加えて、スタートアップや若い企業の場合、社内の柔軟な働き方や国際色豊かな環境が特徴的で、ドイツ語のスキルが必須でない場合もあります。
こうした企業では、英語の履歴書を受け入れてくれるケースが多く、英語を使用した応募の方がより適切な場合もあります。



稀に、求人広告に「履歴書は英語で」などと指定されていることもあるから、求人内容をしっかり確認することが重要だよ!
結論として、言語の選択は応募する企業やポジションの要求に従い、ドイツ語が必要であればドイツ語で、国際的な企業や英語が主流の企業には英語の履歴書を準備することがポイントです。
誤解を避け、自己評価を適切に伝えることが重要ですので、言語の選択には十分な注意が必要です。
履歴書に記載すべき内容
ドイツで履歴書に書くべき情報を、以下の通りまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
氏名(必須)
- 名前、苗字の順番で書くことが一般的です。
- すべて大文字にしたりフォントサイズを大きくしたりして、目立つように書きましょう。
メールアドレス(必須)
- ドイツで書類選考を通過した場合、半分ぐらいの企業はメールで面接に招待してくるため、メールアドレスは必須です。
- 書類選考落ちした場合は、メールで返事が来ることが一般的です。



メールアドレスを書き間違えると選考結果が届かないから、スペルミスには要注意!
電話番号(必須)
- 国番号から書くようにしましょう。ドイツは+49、日本は+81などです。
- ドイツで書類選考を通過した場合、半分ぐらいの企業は電話で面接に招待してくるため、電話番号は必須です。



日本は、電話よりもメールやチャットが好まれる国だし、メールやチャットの方が不慣れな外国語での対応もしやすいけど、ドイツ人は電話好きが多いよ!
住所(任意)
- ドイツでは、履歴書への住所の記載は任意であり、書いている人と書いていない人がいます。
- オフィス所在地から遠くに住んでいないことを伝えるため、またはオフィス所在国に居住していることを伝えるため、筆者は住所を書くことをおすすめします。
- 日本からドイツに所在する企業に応募する場合でも、住所(せめて日本&都市名だけでも)は書いた方が良いです。理由は、ビザ取得と引っ越しのため、入社までに数ヶ月の時間が必要であると間接的に伝えるためです。
- 住所を履歴書に書く場合、完全に書く人と都市名のみ書く人がいますが、履歴書上はどちらでも構いません。
- オフィスとの距離を確認するため、履歴書に住所を一切記載していない場合でも、面接時にだいたいの住所を聞かれることが多いです。
- 遅くても採用企業側による雇用契約書作成時には、住所をその企業に伝える必要があります。



採用選考の途中で引っ越した場合には、新しい住所をその企業に伝えるようにしてね!
国籍(任意)
- 国籍の記載は必須ではありませんが、1/3ぐらいの人が書いています。
- ドイツで就職活動をする場合、特にEU国籍の人はビザが必要ないことを伝えるために国籍を書くと有利です。
- 日本国籍の場合も、比較的ビザの申請が通りやすいため、書いて損はないと思います。
誕生日(任意)
- 誕生日の記載は必須ではありませんが、半分以上の人が書いています。
- ドイツでは、年齢が採用選考の合否に影響することは基本的にタブーのため、また職歴や学歴などからある程度の年齢を推測可能なため、書かなくても問題ありません。
- 誕生日を書く場合は、日、月、年の順番で書きます。(例:30.12.1999)
性別(任意)
- 性別の記載は必須ではなく、大半の人が記載していません。
- ドイツでは、性別が採用選考の合否に影響することは基本的にタブーのため、また名前や顔写真から性別を推測可能なため、書かなくても問題ありません。
ビザ(任意)
- 就労可能なビザの有無、または現在保有しているビザの情報についての記載は任意です。
- 勤務開始にあたって新たなビザが不要な場合は書いても良いですが、記載する人は少数派です。
婚姻状況・子供の有無(任意)
- 婚姻状況や子供の有無の記載は必須ではなく、大半の人が記載していません。
- ドイツでは、婚姻状況によって税クラスが変わったり、子供の有無によって控除額が異なることがありますが、それらが採用選考の合否に影響することは基本的にタブーであるため、書かなくても大丈夫です。
顔写真(任意)
- ドイツでは顔写真が必須ではありませんが、英語圏に比べると顔写真を載せることが一般的です。
- 必ずしもスーツ着用の写真である必要はありませんが、カジュアルな服装での写真は避けましょう。
- ドイツでは日本と違い、微笑んでいる写真や体が斜めを向いている写真を使用する人もいます。
- プロフェッショナルに見えない写真(仕事に関係のない背景が写っている写真、低画質な写真、プリクラなど)の使用は、絶対に避けましょう。



プリクラのような写真を使用した履歴書や、非常に低画質かつ白黒の写真を使用した怖い履歴書を見たことがあるよ…。
職歴(必須)
- 職歴は、履歴書において最も重要な情報であり、採用担当者が最も関心を持っている部分です。
- ジョブタイトル、企業名、オフィスの所在都市、在籍期間を書いたうえで、業務内容を記載します。
- 企業名を伏せて記載する人が稀にいますが、それは採用担当者にとって不透明な情報となり、不採用の原因となりかねません。
- 業務内容については、具体的な内容を箇条書きすることが大切です。
- 良い成果を具体的な数値で表現することが可能な場合は、それも書き添えると良いでしょう。
- 退職理由・転職理由については、書かないことが一般的ですが、会社の経営不振等による退職など自己都合でない場合は、一言書いても良いでしょう。



業務内容が文章で書かれた履歴書を見たことがあるけど、採用担当者にとって読みづらいよ…。



あと、業務内容をまったく記載しなかったり、一言や一行程度で簡略化して記載する人もいるけど、それでは採用担当者が業務内容をイメージできないから、不採用になりかねないよ!
学歴(必須)
- 学歴に関する情報は、特に職歴がない人や短い人の場合、採用担当者が最も関心を持つ部分となります。
- ドイツでは、大学以降または最終学歴のみを記載すれば十分です。
- 大学名、大学所在都市名、修了した課程(BachelorやMasterなど)、専攻、在学期間を書くのが一般的です。
- 論文を執筆した場合は、そのテーマやタイトルを記載しても良いでしょう。
- 成績が良い場合は、成績のスコアを記載しても良いでしょう。ただし、成績のスコアは国によって基準が異なるため、例えば「(GPA: 3.8/4.0)」といったように、基準も一緒に書いておくことが重要です。



GPAを採用する日本の大学では値が大きい方が成績が良いけど、ドイツの大学では値が小さい方が成績が良いよ!
空白期間の説明(任意)
- ワーキングホリデーやボランティア活動など、ポジティブな理由で空白期間がある場合には、その理由を書くことをおすすめします。
- たとえ仕事に直結しない経験であっても、何をしていたかを明確にすることで、空白期間への疑念を取り除くことができます。



「ワーキングホリデー」や「ボランティア」など、専用のセクションを履歴書内に設けると整理しやすいよ!
言語力(必須)
- できる限りヨーロッパの言語基準(CEFR)に従って記載するようにしましょう。「A1」「B2」「C1」といったヨーロッパで標準的なスケールで表すと、採用担当者にとって理解しやすくなります。
- TOEICやTOEFLなど、結果が点数で出るタイプの言語力テストの場合、インターネットで調べれば点数とCEFRの換算表が見つかるはずです。
- 言語力をグラフを使用して視覚的に表現する人もいますが、主観的かつ基準が曖昧なため、グラフだけに頼るのは避けましょう。
- 言語力を、CEFRのレベルやテストのスコアではなく、「fortgeschritten」「intermediate」などの言葉で記載する方もいますが、主観的で基準が曖昧なためあまりおすすめしません。
その他スキル(必須)
- 特にITスキルやツール使用スキルについては書くようにしましょう。
- 資格等(例えば、マイクロソフト オフィス スペシャリストなど)を持っていない限り、能力を客観的に測定・判断することができません。そのため、言語力を記載する場合と違い、「sehr gut」「advanced」などの主観的評価でも構いません。また、そのような評価はせず、スキル名(ツール名)だけでも構いません。
資格(必須)
- 特に、応募したポジションに関係のある資格を持っている場合、積極的に記載するようにしましょう。
趣味・特技(任意)
- 趣味や特技の記載はもちろん任意ですが、半分ぐらいの人が書いています。
- 内容にもよりますが、面接時の話のネタになることもあるため、書いて損することはないでしょう。
まとめ
・ドイツの履歴書には決まったフォーマットが存在しない。
・デザインに凝った履歴書よりも、重要な情報が網羅されていて、それらを読み手が簡単に見つけられる履歴書が良い。
・ドイツでは履歴書のページ数に制限が基本なく、職歴が豊富な場合は2~3ページ程度が一般的。
・履歴書に使用する言語は、応募する企業やポジションの要求に従うべき。
・ドイツ語が不得意な場合、無理にドイツ語で履歴書を作成・使用することは避けるべき。
・職歴欄の業務内容については、具体的な内容を箇条書きすることが大切。
以上、ドイツでの履歴書作成の際に気を付けるべき点や重要な点をご紹介しました。
日本の履歴書とは異なり自由度が高い分、情報の網羅性と読みやすさを重視したり、応募するポジションや業界に合った内容を盛り込んだりすることが大切です。
ドイツでの就職・転職を成功させるために、ぜひこれらのアドバイスを参考にしてみてください!
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