「ドイツは自然災害が少ないから安心」と言われることがあります。
確かに、日本のように地震や台風が頻繁に発生する国ではありません。
しかし実際には、ドイツにも洪水(Hochwasser)、暴風(Sturm / Orkan)、猛暑・干ばつ、雹や雷雨などの日本とは一部異なるタイプの自然災害リスクが存在します。
特に近年は気候変動の影響で、洪水や局地的大雨、猛暑による被害が増加しており、ドイツで生活する日本人にとっても無視できない問題になっています。
この記事では、ドイツで発生する主な自然災害の種類、日本とドイツの災害リスクの違い、ドイツ生活で役立つ防災対策について分かりやすく解説します。
これからドイツに移住・留学・駐在予定の方や、現地で安心して生活したい方に役立つ内容です。
- 近々ドイツへ引っ越す予定の方
- ドイツで発生する自然災害に興味のある方
ドイツで起こる主な自然災害|洪水・暴風・干ばつ・猛暑・雹の特徴
ドイツの自然災害は、日本ほど頻繁にニュースで取り上げられないため、「ほとんど起こらない」と思われがちです。
しかし、実際にはドイツでも、自然災害が毎年のように発生しています。
地域によって洪水リスクや暴風被害の発生頻度が大きく異なるため、住む場所によって注意点も変わります。
洪水(Hochwasser)・集中豪雨(Starkregen)|ドイツで最も多い災害
ドイツで最も頻度が高く、被害が大きい自然災害の一つが洪水です。
国土に複数の大きな河川が流れていることに加え、気候変動の影響で集中豪雨や長雨が増加傾向にあることが背景にあります。
特に記憶に新しいのが、2021年7月中旬にドイツ西部で発生した洪水です。
ラインラント=プファルツ州やノルトライン=ヴェストファーレン州を中心に、数日間にわたり記録的な豪雨が続き、特にアール川(Ahr)流域では大規模な河川の氾濫や洪水が発生。
ドイツおよび隣国のベルギーで合わせて180人以上が死亡し、数千軒の家屋が損壊または流失するという、ドイツで過去最悪クラスの自然災害となりました。
都市部でも例外ではありません。
ベルリンやミュンヘン、ケルンなどの大都市圏では、近年「Starkregen(集中豪雨)」による道路の冠水や地下鉄の浸水被害が報告されています。
特にインフラが古いエリアでは排水処理が追いつかず、地下室が水浸しになる被害も頻発しています。
ドイツでは地下室(Keller)を物置として利用する家庭が多いため、洪水発生時には地下室に保管している家具や家電が被害を受けやすいという特徴があります。
ライン川やドナウ川などの大河川沿いでは、過去にも洪水被害が繰り返されてきました。
そのため、ドイツで長期間住むアパートや住宅を選ぶ際、また住宅を購入する際には、洪水リスクや過去の浸水履歴を事前に確認することも防災の観点では重要です。

暴風・嵐(Sturm・Orkan)|冬に多い交通・インフラ被害
日本では「台風」が代表的な風害ですが、ドイツでは冬を中心に嵐や暴風による被害が目立ちます。
例えば、2018年1月の「Storm David(Orkantief Friederike)」では、風速が最大時速205kmに達し、ドイツ全土および周辺国で樹木の倒壊や建物被害、鉄道の運休が相次ぎました。
この嵐では10人が亡くなり、被害総額は17億ユーロにのぼったと報じられています。
また、2022年2月には「Sturm Ylenia」や「Sturm Zeynep」が相次いで北ドイツを中心に襲い、ブレーメンやハンブルク、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州で甚大な被害が出ました。
これらの暴風は、電車やバスの大規模な運休、航空便の欠航、学校の休校などを引き起こしました。
ドイツ気象局(DWD)はこうした嵐に対して名前を付け、警戒情報を出しています。
木の近くを避ける・外出を控えるなどの注意が呼びかけられます。
ドイツでは暴風が予報されると、公共交通機関の運休が早い段階で決定されることが多く、通勤・通学に大きな影響が出ます。
特に冬季に旅行や出張を予定している場合は、天気予報と交通情報を確認する習慣が重要です。

猛暑(Hitze)・干ばつ(Dürre)|冷房が少ないドイツ特有のリスク
近年、ドイツではかつてないほどの干ばつや猛暑が問題になっています。
特に2018年・2019年・2022年の夏は、降水量が極端に少なく、気温が40℃近くまで上昇する日が続きました。
ドイツでは、日本と比較するとまったくと言っていいほど冷房設備が普及していません。
そのため、一般家庭や公共交通機関では熱中症のリスクが高まります。
ドイツの住宅は断熱性が高く、冬は暖かい一方で、夏は室内に熱がこもりやすい構造になっています。
そのため、扇風機や遮光カーテンの使用や、夜間の換気などの猛暑対策が重要です。
また、気温上昇および降水量の極端な減少に伴い、川の水位低下で貨物船の運航に支障が出たり、農業への打撃が深刻化したりと、経済への影響も無視できません。
ブランデンブルク州やザクセン=アンハルト州などの東部地域では森林火災(Waldbrand)が頻発しています。
乾燥した森林などでは、わずかな火種が大規模な山火事に発展する恐れがあるため、夏場はキャンプやバーベキューの火の使用が厳しく制限されることもあります。

雹(Hagel)・雷雨(Gewitter)|南ドイツで多い突発的被害
夏の終わり頃には、激しい雷雨とともに「雹(ひょう)」が降ることがあります。
ドイツ南部、特にバイエルン州やバーデン=ヴュルテンベルク州では、こうした雹害がよく見られます。
例えば、2013年7月には、ゴルフボール大の雹がドイツ各地で降り、住宅や車両に甚大な被害を与えました。
この時の被害総額は、42億ユーロにのぼるとも言われています。
ドイツでは雹による車両被害が非常に多いため、屋外に駐車する場合は、天気予報で雹に関する注意情報や雷雨警報が出ていないかを確認することも重要です。
また、雷雨による落雷で、鉄道の運行停止や停電、電子機器の故障なども度々発生します。
特にアウトドアやハイキング中は、開けた場所を避ける、木の下に避難しないといった基本的な雷対策を守ることが重要です。

このように、ドイツでは地震や台風の代わりに、水・風・熱・氷といった異なるタイプの自然災害が発生しています。
これらに対する正しい知識と備えが、安心して暮らすうえでの鍵となるでしょう。
日本とドイツの自然災害の違い|地震・台風がほぼない理由
日本では日常的に「地震」や「台風」に備える生活が当たり前になっていますが、ドイツに住むと、これらの災害がほとんど起こらないことに驚く方も多いかもしれません。
ここではその理由を、地理や気象の観点から見ていきます。
なぜドイツでは地震が少ないのか?
日本は、「環太平洋火山帯」に位置しており、複数のプレートの境界にあるため、地震や火山活動が非常に活発な地域です。
一方、ドイツはユーラシアプレートの内部にある安定した地殻の上に位置しており、プレートの境界から遠く離れているため、地震が発生しにくいのです。
実際、ドイツにおいて人が感じられるような有感地震は非常に稀で、年に数回、ごく弱い地震が観測される程度です。
中には稀に震度2程度の揺れを感じる地域もありますが、日本のように家具が倒れるような大きな地震は、ドイツでは基本的にはありません。
地震のリスクが低いことで、建築基準や防災対策も日本ほど厳格ではなく、耐震設計が不要な建物も一般的です。

ドイツに台風が来ない地理的理由
ドイツでは、「台風(Taifun)」という言葉を天気予報で目にすることはありません。
ハリケーンやサイクロンを天気予報で聞くこともありません。
その理由は、台風の発生場所と進路に関係しています。
台風やハリケーン、サイクロンは、赤道付近の海水温が高い地域で発生し、偏西風に乗って北西へ進みます。
その後、日本列島や台湾、中国大陸、メキシコやアメリカなどを通過して消滅することが多く、ヨーロッパに到達することは地理的にほぼ不可能です。
つまり、ドイツでは「台風シーズン」や「台風直撃」のような事態は基本的に発生しないため、日本のように台風に備える必要はありません。
ただし、台風ではないものの、ドイツでは「温帯低気圧(Tiefdruckgebiet)」が発達することで、強風や暴風雨を含む嵐(Sturm)が発生します。
これは先述のように、暴風(Orkan)として警戒されるもので、気象的には台風とは異なるメカニズムで発生します。
この温帯低気圧の急激な発達が原因の暴風による被害には、ドイツ北部や沿岸地域で特に注意が必要です。

災害への備え方は日本とどう違う?
こうした自然災害の違いから、ドイツと日本では「災害への心構え」や「備えの文化」にも差があります。
日本では、地震や台風に備えて非常用持ち出し袋や防災訓練、耐震設備などが一般的ですが、ドイツではそうした備えをしている家庭は少ないです。
その代わり、洪水や暴風への対応として、保険(HausratversicherungやElementarschadenversicherungなど)に加入することが対策の一つとされています。
また、火山活動の心配がないため、火山警報や避難指示といった情報も、ドイツ国内で出されることは基本ありません。
このように、ドイツと日本では災害の種類やリスクの性質が大きく異なります。
日本のように地震や台風に敏感な文化から来た人にとって、ドイツの自然災害リスクの少なさは、ある意味で安心材料となるかもしれません。
ドイツ生活でできる防災対策|保険・アプリ・日常の備え
ドイツでは日本ほど頻繁に自然災害が発生しないとはいえ、まったくリスクがないわけではありません。
特に近年は気候変動の影響もあり、洪水や暴風雨による被害が深刻化するケースも増えています。
ここでは、ドイツで暮らすうえで意識しておきたい「災害への備え」について紹介します。
ドイツで加入を検討したい保険
まず、ドイツで家を借りている・所有している場合は、家財保険(Hausratversicherung)や住宅保険(Wohngebäudeversicherung)への加入を検討することが重要です。
特に洪水や地滑り、雹(ひょう)などによる損害は、これらの保険に「Elementarschadenversicherung(自然災害保険)」という特約を追加することでカバーされます。
これは2021年のアール川洪水のような大災害の際にも、多くの家庭が適用を受けた保険です。
保険会社が、洪水リスクの高い一部地域をカバー対象外としているケースもあるため、自分の住んでいる地域がどう評価されているかを確認することが重要です。
災害情報を受け取れるおすすめアプリ
日本の「防災速報」や「緊急地震速報」と同様に、ドイツにも災害情報を配信する公式アプリがあります。
代表的なアプリ:
- NINA(Notfall-Informations- und Nachrichten-App)
ドイツ連邦政府が提供する公式災害情報アプリ。
地域ごとの警報(洪水、暴風、感染症など)をリアルタイムで受け取れます。 - Katwarn
地域自治体が配信する警報システム。
NINAと併用する人も多いです。
これらのアプリをインストールし、自分の居住地や勤務地を登録しておくことで、災害時に素早く行動する助けになります。

洪水・暴風に備えた対策
洪水や暴風に対しては、以下のような基本的な備えが役立ちます:
- 地下室や低い場所に重要な物を置かない
- 排水溝・雨どいの定期的な掃除
- 強風の前にはバルコニーの植木鉢や家具を屋内に入れる
- 長時間の停電に備えて懐中電灯やモバイルバッテリーを常備
特に川沿いに位置する地域では、水の逆流や浸水に備えて、砂袋(Sandsäcke)を設置できるよう準備しておく家庭もあります。

ドイツ語が不安でもできる災害情報の集め方
日本と異なり、災害時の情報がすべてドイツ語で発信されることが多いため、基礎的なドイツ語の表現や災害用語に慣れておくことも大切です。
災害時には、子供でも理解できるよう短い警告文が表示されることが多いため、「警報」「避難」「洪水」などの基本的な単語を覚えておくと理解しやすくなります。
先に紹介したNINAアプリには英語対応もありますが、自治体のホームページやテレビのニュースなどは基本的にドイツ語です。
また、日本人コミュニティが活発な都市(例:デュッセルドルフやミュンヘン)では、地域の日本語掲示板やSNSを通じて情報を共有する(してもらう)ことも有効です。
最後に
ドイツの自然災害は、日本とは種類も発生頻度も異なります。
ドイツでは、地震や台風のような大規模自然災害のリスクは比較的低いものの、洪水や暴風などの局地的な災害は現実的な脅威です。
日常的な備えを怠らず、正確な情報を早めにキャッチできるよう体制を整えておくことで、万が一の際も落ち着いて行動できるでしょう。

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