2024年8月、私自身が会社の経営難による大量解雇の対象となり、ドイツで人生で初めての失業を経験しました。
この出来事は予期していなかっただけに、解雇通告受領後に取るべき行動について調べる日々が続きました。
※筆者の場合、幸いにも2024年10月下旬に新たな雇用先が見つかりました。
不本意な形で職を失った場合でも冷静に対応できるよう、この記事では、ドイツで雇用主から解雇通告を受けた場合に取るべき行動をまとめます。
いざという時に役立てていただければと思います。
・ドイツで就労していて、雇用主から解雇通告を受けてしまった方
・ドイツで失業してしまった方
・ドイツで就労していて、万が一失業してしまった場合に備えておきたい方
免責事項
今回ご紹介する、ドイツで解雇通告を受けてしまった(失業してしまった)場合に取るべき行動は、2024年8月上旬にミュンヘンにて、筆者自ら解雇通告を受けてしまった際の体験に基づいています。
取るべき行動や流れ、必要書類等は、年月とともに変更となる可能性があります。
また、保有しているビザ等によって多少異なる可能性がありますのでご注意ください。
加えて、本記事は、1ヶ月程経った行動を記憶を頼りに執筆した部分を一部含むため、(恐らくないとは思いますが)手順や必要な手続きが漏れがあったり、情報に誤りがあったりする可能性があります。
その点については、あらかじめご了承いただき、ご自身の責任で参考程度にご覧いただければ幸いです。
解雇通告を受けたら行うべき行動の大まかな流れ
解雇通告を受けてしまった場合は、次のステップに従いましょう:
書面で解雇通知書(Kündigungsschreiben)を受領し、その内容、特に解雇理由および解雇日を確認します。また、必要に応じて、雇用主に勤務免除(Freistellung)を申し出ます。
解雇通告を受けてから3営業日以内に労働局(Agentur für Arbeit)に通知し、求職者として登録する必要があります(Arbeitssuchendmeldung)。
ドイツで就労ビザを保有している場合、ビザの種類のよってはただちに外国人局に連絡する必要があります。
退職日以降に失業者となる可能性がある場合は、労働局にて失業者登録(Arbeitslosmeldung)を行います。
失業手当をオンラインで申請する場合、労働局のポータルサイトにアクセス用に二要素認証を設定します。
失業手当(Arbeitslosengeld I)を受給するため、退職日までに必要書類を揃えて申請します。
労働局の担当者と面談を実施します。通知された日時からの変更は基本できません。
Step 1:解雇通知書の受領および解雇理由の確認
解雇が口頭で告知された場合も、正式な「解雇通知書(Kündigungsschreiben)」を必ず書面で受け取るようにしてください。
ドイツでは、正式な解雇通知が書面で発行されることが法律で定められています。
解雇通告書を書面で受け取ったら、記載内容を確認しましょう。
解雇の理由が「企業都合」か「業務上の都合」かによって失業手当の支給条件等変わるため、明確な理由を把握しておくことが重要です。
また、退職日も確認しましょう。
労働契約書(Arbeitsvertrag)と比較し、違法な解雇が行われていないかも併せて確認しておくと安心です。
例えば、退職通知期間が守られているかなどを、労働契約書と比較してチェックしてね!
退職後に適用される条件(競業避止義務、退職金など)についても労働契約書を確認して、必要に応じて雇用主に再度確認することが重要だね!
Step 2:労働局への通知と求職者登録(Arbeitssuchendmeldung)
解雇通告を受けたら、すぐにオンラインまたは近隣の労働局(Agentur für Arbeit)で通知を行い、求職者登録(Arbeitsuchendmeldung)を行いましょう。
原則として、解雇通告を受けてから3営業日以内に本手続きを完了する必要があります。
この手続きが遅れると、失業手当の支給がスムーズに行われなくなる可能性があります。
登録時の内容(退職日など)が後で変更になった場合でも後で修正できるから、一旦解雇通告書に記載の内容で登録しよう!
Step 3:ビザの確認と外国人局への連絡
ドイツで就労ビザを保有している場合、ビザの種類のよってはただちに外国人局(Ausländerbehörde)に連絡する必要があります。
※筆者は、ビザや法律の専門家ではないため、情報に誤りがあった場合の責任については負いかねますので、ご了承ください。
現雇用主に紐づいた就労ビザの場合
外国人局への連絡:
- 失業時には、外国人局に速やかに通知する義務があります。これは、ビザが現在の雇用主とその職務に依存しているためです。
ビザの有効性と滞在可能期間:
- 特定の雇用に基づいて発行されているため、雇用契約が終了した場合、そのビザは本来の目的を果たさなくなります。
- ただし、一般的には、直ちに失効して帰国しなければならないわけではなく、新しい雇用先を見つけるための短期間(数ヶ月程度)の滞在が認められます。
- 外国人局に連絡して失業中の滞在条件について相談し、指示を受けることが必要です。
新しい雇用先を見つけるために与えられる猶予期間は、外国人局の裁量次第だよ!
特定の雇用主に紐づかない就労ビザの場合
外国人局への連絡:
- 雇用主に依存しない就労ビザを持っている場合は、失業時に外国人局に通知することは義務ではありません。
- ただし、外国人局との連絡が推奨される場合もあります
ビザの有効性と滞在可能期間:
- この種類のビザは、一般的にそのビザが期限が切れない限り、ドイツ国内に留まり新しい仕事を探すことが認められます。
- 特定の雇用主に縛られていないため、比較的柔軟に転職活動ができ、新しい雇用主が見つかった際にも外国人局に通知する義務はなく、すぐに新しい仕事を開始できます。
こういう時にも、特定の雇用主に紐づいていない就労ビザは、その強さを発揮するのね!
ブルーカードの場合
外国人局への連絡:
- ブルーカード(Blaue Karte EU)を持つ場合も、失業後は外国人局に連絡する必要があります。
ビザの有効性と滞在可能期間:
- ブルーカード保持者が失業した場合でも、ビザは通常3ヶ月間有効です。この期間内に新しい雇用先を見つけることが求められます。
- 状況によっては、この3ヶ月間を超えて延長できる場合もありますが、外国人局との相談が必要です。
となると、ある意味では、ブルーカードよりも特定の雇用主に紐づかない就労ビザの方が、失業時には強いのね!
特定の雇用主に紐づかない就労ビザは、雇用の有無によってビザの有効性に直ちに影響が出ないから、失業時にはより安定した滞在が可能だね!
でも、ブルーカードには永住権取得に向けた優遇措置もあるから、どちらの方が良いか一概には言えないよ!
Step 4:失業者登録(Arbeitslosmeldung)
まだ次の仕事が見つかっていないなどの理由で、退職日以降に失業者となる可能性がある場合は、求職者登録(Arbeitsuchendmeldung)に続き、労働局にて失業者登録(Arbeitslosmeldung)を行います。
もし、次の仕事が既に見つかっており失業期間が発生しないのであれば、失業者登録は不要となります。
この手続きは、退職日の前日または当日ではなく、10日前頃までに完了しておくのが望ましいです。
特に、失業手当の申請をスムーズに進めるためには、早めに失業者登録が済んでいることが重要です。
手続きは、近隣の労働局だけでなくオンラインでも可能です。
Step 5:二要素認証(TOTP)の設定
失業手当をオンラインで申請する場合、労働局のポータルサイトから行うことになります。
このポータルサイトは、求職者登録(Arbeitsuchendmeldung)や失業者登録(Arbeitslosmeldung)をオンラインで実施した人にとっては既にお馴染みのものですが、失業手当申請時までに二要素認証(TOTP)を設定することが求められます。
これにより、安全かつ迅速にオンライン手続きを進めることができます。
二要素認証を行うには、スマートフォンに認証アプリをインストールし、ポータルと連携して利用できるように設定します。
Step 6:失業手当の申請
失業手当を受け取るためには、失業手当(Arbeitslosengeld)の申請が別途必要です。
失業手当を遅延なくスムーズに受領するためには、必要書類を早めに準備し、遅くとも退職日以前に申請手続きを済ませておくことが求められます。
なお、ドイツの失業手当には以下の二種類があり、通常まずはArbeitslosengeld Iが支給されることになります。
また、Arbeitslosengeld Iの申請に必要な書類には、次のものが含まれます。
- 雇用証明書(Arbeitsbescheinigung)
→雇用主に頼んで発行してもらう必要があります。基本的には過去2年間分の雇用証明書を求められます。つまり、過去2年以内に転職している場合は、転職前の雇用主にも雇用証明書の発行を依頼する必要があります。
→なお、2023年1月からは、特段の事情がない限り、雇用主が労働局にオンラインで直接提出する仕様ように変更となったようです。この点については、各雇用主に確認してください。
→これは、失業手当の計算基準となる社会保険加入期間を確認するためです。また、この証明書は、給与や保険料の支払い状況など、雇用に関する詳細情報が含まれているため、支給額や支給条件を決定するのに使用されます。 - 失業手当申請書
→オンラインで申請する場合は、必要情報を入力すると、システムが自動的に申請書を生成し提出が完了するため、別途紙の申請書は不要です。
→一方、労働局に直接出向く場合は、申請書を現地で記入し提出する流れになります。 - 身分証明書(パスポートや滞在許可証)
→オンライン申請の場合、基本的には不要となります。
→労働局に出向いて申請する場合は、本人確認として身分証明書を持参する必要があります。 - Kündigungsschreiben
→雇用主から受領した紙の解雇通知書(Kündigungsschreiben)を提出する必要があります。
→オンラインで申請する場合は、スキャンした物で構いません。 - Abwicklungsvereinbarung
→解雇にあたり、雇用主との間で退職日や退職金などについて別途契約を交わした場合は、その書類(Abwicklungsvereinbarung)を提出する必要があります。
→オンラインで申請する場合は、スキャンした物で構いません。 - 銀行口座情報
→失業手当の支払いのため、IBANを含む正確な口座情報を提供する必要があります。
特に、雇用証明書(Arbeitsbescheinigung)の準備には時間が掛かるケースも多いから、早めに現雇用主や過去の雇用主に連絡しよう!
ちなみに、失業者として登録する前の30ヶ月のうち、少なくとも12ヶ月間社会保険に加入していたことが、失業手当(Arbeitslosengeld I)の申請条件になります。
もしくは、失業者として登録する前の30ヶ月のうち、少なくとも6ヶ月間社会保険に加入しており、ほとんどの仕事が臨時雇用(最長14週間)であった場合も、条件を満たすことになります。
Step 7:労働局との面談
失業した場合、労働局の担当者と面談を実施することが一般的です。
面談のタイミング:
- 失業後に面談が行われることが一般的です。
- ただし、場合によっては、解雇通告後すぐに面談が設定され、失業する前に面談を受けることがあります。
面談の場所:
- 伝統的には、労働局のオフィスで面談が行われます。事前に日時が設定され、その時間に出向く必要があります。通知された日時からの変更は基本できません。
- ただし、健康上の問題や家庭の事情など、状況によってはオンラインでの面談も可能なようです。
面談で聞かれる内容:
- 失業の理由:どのような理由で失業したのか、解雇通告の詳細など。
- 職歴:過去の職務経歴やスキルについての質問。
- 再就職の意向:次の職を探しているのか、どのような職種を希望しているのか。
もちろん、面談の内容は個人の状況によって異なるよ!
失業者になった後の対応と注意点
正式に失業者となった後は、失業手当を受給しつつ、新たな雇用先の確保に努めます。
ここでは、定期的に労働局との連絡や求職活動を行うことが重要です。
定期的な報告義務
失業者は、労働局と定期的に連絡を取り合い、求職活動状況を報告します。
一般的には、労働局から定期的に呼び出しがあり、その際に面談や進捗報告を行うことになります。
活動が不足していると判断された場合、支給が一時的に停止される場合もあるようです。
また、労働局から送られてくる求人には、しっかりと反応・対応をする必要があります。
しばらく対応せず放置しておくと、真面目に求職活動を行っていないと判断され、失業手当の支給が一時停止されかねません。
もし、まったく経験がない業務内容や、だいぶ前に経験した業務内容を含む求人が送られてきた場合はどうすればいいの?
その場合は、「専門外である」といった内容で返信すれば大丈夫だよ!
健康保険の確認
ドイツでは、失業している間の健康保険の継続は、一般的に労働局(Agentur für Arbeit)が健康保険料を負担する形で行われます。
ただし、失業手当の支給が遅れると、一般的には法定健康保険(gesetzliche Krankenversicherung)が無効になってしまいます。
法定健康保険では、失業手当が支給されていない状態では保険料の支払いも行われないため、保険が一時的に無効になってしまうのです。
一方、私的健康保険(private Krankenversicherung)については、状況が異なります。
一般的には、私的健康保険は契約に基づいているため、支払いが遅れたり、受給資格が失われた場合でも、自動的に無効になることは少ないですが、保険契約の内容によります。
筆者のように、労働局に失業登録が済んでおり、失業手当の申請も提出済みであるのに、労働局側が申請を処理するのに時間が掛かり、その結果として健康保険が無効になってしまうことも残念ながらあります。
その場合は、労働局に度々電話で連絡を取り、手続きの進捗について確認するとともに、提出書類に不足がないか確認することをおすすめします。
また、健康保険会社にも電話で連絡して状況を説明し、健康保険の適用状況について具体的に問い合わせてみることをおすすめします。
保険会社が状況を理解し、必要なサポートを提供してくれる場合もあるようです。
支出の見直し
失業中は、失業手当が支給される場合でも収入が大きく減少する可能性が高いため、支出の見直しも検討しましょう。
語学力の維持・向上
失業中は、語学力の維持や向上にも努めることをおすすめします。
英語が堪能な場合でも、やはりドイツ語ができるのとできないのでは、就職の幅が大きく異なります。
また、日本語ではなくドイツ語や英語で仕事をしていた人の場合、失業によりそれらの外国語を使う機会が減ってしまうことも多くあります。
語学力が落ちることにより、ドイツでの再就職が難しくならないよう、語学力の維持に努める必要があります。
僕が失業した時も、ドイツ語の使用頻度が大幅に減少したから、ドイツ語が下手にならないかとても心配だったよ!
解雇通告後もしくは失業中に仕事が見つかったら
解雇通告後もしくは失業している状態から新しい雇用主や仕事が見つかった場合、以下の手続きを行うことが重要です。
労働局への連絡
新しい雇用先が決まったら、速やかに労働局に連絡を取りましょう。
これは、失業手当の受給状況等に影響を与えるためです。
つまり、失業手当の支給は、労働局に雇用先が決まった旨を報告することにより、新しい雇用主への入社日前日をもって自動的に停止します。
この手続きは、労働局のオフィスに出向くことでも可能ですが、オンラインでも実施可能です。
失業手当の申請の取り消し(該当する場合)
解雇通告を受けて失業手当の申請をしたものの、実際に失業する前に新しい職が見つかった場合は、失業手当の申請自体を取り消す必要があります。
そもそも、結果的に失業していないもんね!
実際に失業した場合は、失業手当の申請の取り消しは労働局への連絡と同時に自動的に行われるから、別途実施する必要がないよ!
ビザの更新(該当する場合)
ドイツにおいて、新しい雇用主での就労に有効なビザを持っていない場合(特定の雇用主に紐づいた就労ビザを持っている場合など)は、外国人局(Ausländerbehörde)に連絡し、ビザの更新手続きを行う必要があります。
この手続きは、スムーズに新しい職場に移行するために大変重要であり、新しい雇用先が決まり次第一刻も早く開始することをおすすめします。
詳細については、外国人局のウェブサイト等を確認し、必要な手続きを把握してください。
ビザの更新には、短くて2週間程度、長くて数ヶ月程度掛かるよ!
健康保険の確認(該当する場合)
新しい職場に就くことで、健康保険の加入状況(保険料の負担割合など)が変わる場合が稀にあるようです。
新しい雇用主から案内や指示があった場合には、それに合わせて健康保険の手続きも行いましょう。
最後に
私自身の経験から、解雇されることは非常にストレスフルな状況であることを十分理解しています。
しかし、ドイツの失業手当や労働支援制度は充実しており、正しい手続きを行えば生活を支えるサポートが整っています。
このガイドを参考に、解雇通告受領後も冷静に行動し、次のステップへとつなげていただければ幸いです。
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