教科書に載ってないドイツ語 ~方言の不思議な世界~

教科書で習った「標準ドイツ語(Hochdeutsch)」はドイツにいる限り通じるはず…
と思っていたら、ドイツ各地でまったく違うドイツ語が飛び交っていてビックリすることがあります。

お互いドイツ語を話しているのに、お互いほとんど理解できないということもあります。
また、フランス語のようなオランダ語のような言語が聞こえてきたと思ったら、実はそれがドイツ語だったりすることも。

この記事では、実際にドイツに住んで気づいたドイツ語の方言」について、いくつか例を挙げながら紹介していきます!

この記事は、こんな人におすすめ!
  • ドイツへの引っ越しが決まっている、もしくは引っ越し予定の方
  • ドイツ語を勉強中の方
  • ドイツ語の方言に興味のある方
目次

ドイツ語の標準語って何?─ Hochdeutschと方言の関係

日本語で言う「標準語」にあたるのが、ドイツ語の「Hochdeutsch(ホッホドイチュ)」。
学校やテレビ、新聞、ビジネスメールなどで使われる「標準的」なドイツ語です。

ただし、「Hoch」と言っても「上品」とか「洗練されている」という意味ではありません。
標高の低い北ドイツで使用される方言である「低地ドイツ語(Plattdeutsch / Niederdeutsch)」の対となる形で、Hochdeutschと呼ばれています。

とはいえ、ドイツに住んでみると「あれ?学校で習ったHochdeutschと何かが違う気がする…」と感じる場面が多いかもしれません。
それもそのはず。
ドイツ国内、そしてドイツ語圏内には非常に多くの方言(Dialekte)があり、地域によってまるで「別の言語」のように聞こえることもあるのです。

例えば、挨拶する時には、標準語であるHochdeutschでは「Guten Tag.」が一般的ですが、南ドイツでは「Servus.」や「Grüß Gott.」、北ドイツでは「Moin.」を使用することが一般的です。

例えば、南ドイツに行けば行くほど、地元の年配の方々は日常会話でガッツリ方言を使っています。
それゆえに、外国人どころか、他地域のドイツ人ですら聞き取れないこともあるほど。
つまり、ドイツでの旅=言語の世界を旅するようなものなのです!

地域によってこんなに違う!代表的なドイツ語の方言

では、具体的にどのような方言があるのでしょうか?
以下に代表的な4つを紹介します。

バイエルン語(Bairisch)

南ドイツ・バイエルン州で話されている方言で、「ドイツ語なのに聞き取れないランキング」上位常連。

例:

  • 標準語:Ich weiß es nicht.(私はそれを知りません)
  • バイエルン語:I woaß ned.(私はそれを知りません)
  • 標準語:kleines Mädchen(小さな女の子)
  • バイエルン語:klanes Madl(小さな女の子)

語尾が「-l」になるのが特徴的で、人によってはちょっと可愛い印象も。

シュヴァーベン語(Schwäbisch)

バーデン=ヴュルテンベルク州やバイエルン州西部で使われている方言で、語尾に「-le」がつくのが特徴的。

例:

  • 標準語:Brötchen(パン)
  • シュヴァーベン語:Weckle(パン)
  • 標準語:Mädchen(女の子)
  • シュヴァーベン語:Mädle(女の子)

何となく語感に柔らかさがあるような気がします。

ザクセン語(Sächsisch)

旧東ドイツ地域であるザクセン州(ライプツィヒ、ドレスデンなど)で話される方言。
イントネーションが独特で、ちょっと舌足らずっぽく聞こえることも。

例:

  • 標準語:Guten Tag.(こんにちは)
  • ザクセン語:Guden Dagg.(こんにちは)
  • 標準語:Ich habe Hunger.(お腹が空いた)
  • ザクセン語:Isch habbe Hunger.(お腹が空いた)

他地域のドイツ人にとっても「すぐ分かる、ザクセン訛り」として知られています。

プラットドイチュ(Plattdeutsch/低地ドイツ語)

北ドイツで使われている方言。
高地の方言とは逆に「platt=平らな」という意味で、発音はオランダ語に似ています。
語彙もHochdeutschとはかなり違います。

例:

  • 標準語:Ich gehe nach Hause.(私は家に帰る)
  • プラットドイチュ:Ik gahn na Huus.(私は家に帰る)

プラットドイチュは、日常ではあまり使われなくなってきているようですが、田舎では年配者により今も使用されることがあります。

日常生活で出会う「方言あるある」体験談

そもそも挨拶の言葉が違う

私が、日本の大学で第二外国語としてドイツ語を習い始めてから約1年が経った頃のことです。
日本人の友人と、南ドイツのミュンヘンおよびオーストリアのザルツブルクとウィーンへ旅行をしました。

まず、ミュンヘンに行ったのですが、レストランに入ると同時に、ウェイターが私たちに対して何か一言を言ってきました。
私たちの方をしっかりと見て言ってきたので、私たち対してに何かを言っていることは確かでした。
しかし、聞いたことがない表現であったがために、それがどのような意味なのか、果たして質問なのかそうでないのか理解できず、返事に困ってしまいました。

その後、ザルツブルク、ウィーンへと旅行を続けましたが、そこでもレストランに入るたびに、同じことを言われました。
ウィーンではホテルでも同じことを言われたので、状況やタイミングから、これは挨拶の言葉だとようやく理解することができました。

私たちが何度も聞いたその謎の表現は、「Grüß Gott.」で、南ドイツやオーストリアで頻繁に使われる挨拶の言葉でした。

私は、大学の授業で習った「Guten Tag. / Guten Morgen. / Guten Abend.」または「Hallo.」のいずれかが、挨拶の表現としてどこでも使われると思っていました。
そのため、私は、初めて聞く「Grüß Gott.」という表現にどう反応したら良いか何度も困ってしまいました。

パン屋でパンを上手く注文できない

パン屋でパンを買う時にも、一苦労することがあります。
それは、小さくシンプルなパンの呼び方が地域によって異なるからです。

ハンブルクやケルン、フランクフルトを含む北ドイツやドイツ中部では、日本のドイツ語の授業でも習う「Brötchen」が使われます。
私もデュッセルドルフに住んでいた時は、この「Brötchen」という表現をよく使っていました。

ドイツ博士

でも、実際には、「Brötchen」ではなく「Normales(普通のもの)」と言って注文する人も多いよ!

その一方で、ミュンヘンを含むバイエルン州では、その同じ小さなパンのことを「Semmel」もしくは「Semmerl」と呼びます。
また、シュツットガルトがあるバーデン=ヴュルテンベルク州では「Weckle」と呼ばれることがあり、ベルリンでは「Schrippe」という表現が使われることもあります。

私の経験上、「Brötchen」という表現はミュンヘンでも十分に通じますが、店員に対して旅行者感丸出しになってしまいます。

ちなみに、デュッセルドルフで聞いた「Normales」という表現は、ミュンヘンでは聞いたことが一度もありません。

chの発音でバレる方言

ドイツ語の「ch」の発音も、地域によって若干の違いがあります。
特に、「ch」の後に「i」もしくは「e」が続く場合に、その違いが見られます。

例えば、「China(中国)」という単語の発音は、一般的には「ヒーナ」です。
しかし、南ドイツでは「キーナ」という発音になります。
同様に、「Chemie(化学)」という単語の発音も、一般的には「ヒェミー」ですが、南ドイツでは「ケミー」になります。

恐らく、日本人にとっては、南ドイツバージョンの方が発音しやすいと思います。

私は、発音のしやすさや南ドイツであるミュンヘンに住んだ歴の長さから、「キーナ」や「ケミー」のように発音しています。
そのため、例えば、北ドイツや東ドイツの人などと話すと、「そういえばこれも方言の一種だった」と改めて気づかされます。

少しだけオーストリア&スイスの方言にも触れてみよう

今回はドイツ国内の方言がメインですが、お隣のオーストリアやスイスにも、素晴らしくユニークな「方言ワールド」が広がっています。
ここでも軽く触れてみましょう。

オーストリアのドイツ語(Österreichisches Deutsch)

文法や発音は、標準ドイツ語もしくはバイエルン州の方言に近いのですが、語彙の違いが大きなポイント

意味ドイツ(標準語)オーストリア
じゃがいもKartoffelErdapfel
トマトTomateParadeiser
TüteSackerl

スイスドイツ語(Schweizerdeutsch)

スイスで話されているドイツ語は、標準ドイツ語とはかなり異なる独立性の高い方言です。
特にアレマン語系の影響が強く、書き言葉と話し言葉の乖離が激しいのが特徴

例:

  • 標準語:Ich habe es gesehen.(私はそれを見ました)
  • スイスドイツ語:Ich ha’s gseh.(私はそれを見ました)
  • 標準語:Ich habe das nicht verstanden.(私はそれを理解できませんでした)
  • スイスドイツ語:Ich han das nöd verstande.(私はそれを理解できませんでした)

さらに、スイスではドイツ語の「ß(エスツェット)」を使わず、常に「ss」で表記します(例:「Straße」→「Strasse」)。

スイスのドイツ語は、ドイツ人ですら字幕が欲しくなるほど聞き取りが難しいことも。
ただ、その音楽的なリズムや響きに惹かれる人も多いようです。

まとめとアドバイス:方言も「楽しむ」気持ちがカギ!

ドイツ語圏に住み様々な場所へ旅行することで、ドイツ語にも日本語のように強い方言があることに気がつきます。
でも、それは「困ること」ではなく、むしろ「発見の連続」として楽しめるものでもあります。

最初は、レストランやパン屋で「え?」、職場での会話で「ごめん、もう一回言って…」、と戸惑う日々が続くかもしれません。
でも、慣れてくると、方言にはその土地の文化や歴史が詰まっていることに気づきます。

例えば…

  • 「Grüß Gott.」と言われると、南ドイツの保守的な文化を感じたり、
  • 「Moin!」の一言に、北ドイツのあっさりしたフレンドリーさを感じたり。

そして何より、「あ、今の方言、わかったかも!」という瞬間は、語学学習者としてとても嬉しいものです。
そのような小さな成功体験が積み重なると、「異文化の壁」がぐんと低くなっていく気がします!

ゆとり
ドイツ生活6年目のゆとりです。デュッセルドルフで2年半働き、現在は再度ミュンヘンで働いています。過去にミュンヘンで交換留学およびワーホリも体験しました。
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