ドイツ語を勉強していると、「えっ、なんでこんな言い方になるの?」と疑問に思う表現に出会うことがあります。
特に、日本語や英語と違って、間接目的語(Dativ / 3格) を使う構文は、ドイツ語を勉強する際に難しく感じるポイントの一つです。
例えば、次のような表現を見たことはありませんか?
- „Mir ist kalt.“ (私は寒い)
- „Die Füße tun mir weh.“ (足が痛い)
日本語をベースに考えると、「私は寒い(Ich bin kalt.)」や「私の足が痛い(Meine Füße tun weh.)」と言いそうですが、ドイツ語ではこれらの表現は少し違った形になります。
なぜなのでしょうか?
今回は、ドイツ語の不思議なDativ構文について解説していきます。
- ドイツ語初級レベルおよび中級レベルの方
1. Mir ist kalt. / Mir ist schlecht.
„Mir ist kalt.“ という表現を日本語に直訳すると、「寒さが私にとってある」といった感じになります。
ドイツ語では、寒さや気分の悪さは「自分が持っているもの」ではなく、「自分に影響を及ぼすもの」と考えます。
別の言い方をすれば、「私にとって」どうかを考えて表現する必要があります。
そのため、「私は寒い」と言いたい場合は、「私にとって寒い」と考え、Dativ(3格)である „mir“ を使って表現するのです。
ちなみに、„Mir ist kalt“ は、„Es ist mir kalt“ に由来する表現です。
„Es ist mir kalt“ から、esが抜けて語順が入れ替わった口語表現が „Mir ist kalt“ であると考えるとわかりやすいかもしれません!
なお、同じ構造の表現には、次のようなものがあります。
- „Mir ist heiß.“(私は暑い)
- „Mir ist schlecht.“(私は気分が悪い)
- „Mir ist langweilig.“(私は退屈している)
一方で、„Ich bin kalt.“ とは言いません。
これは「私は冷たい人間です」という意味になってしまうからです。
2. Die Füße tun mir weh.
「足が痛い」と言いたい場合、日本語の感覚では „Meine Füße tun weh.“(私の足が痛む)と言いそうですが、ドイツ語では „Die Füße tun mir weh.“ という形が一般的です。
これは、「足が痛みを引き起こし、その影響を私(mir)が受けている」という構造になっています。
同じパターンの表現として、次のようなものがあります。
- „Der Kopf tut mir weh.“(頭が痛い)
- „Der Bauch tut mir weh.“(お腹が痛い)
„Meine Füße tun weh.“ も文法的には一応正しいですが、„Die Füße tun mir weh.“ の方がより自然な表現になります。
3. Es gefällt mir. / Es schmeckt mir.
ドイツ語では「好き」「気に入る」と言いたい場合に、mögenという助動詞を使う方法の他に、gefallenという動詞を含むDativ構文を使用する方法があります。
例えば、„~ gefällt mir.“ という表現があります。
- „Dieses Buch gefällt mir.“(この本が私の気に入る → 私はこの本が気に入っています)
- „Die Musik gefällt mir.“(この音楽が私の気に入る → 私はその音楽が気に入っています)
英語では、 I like this book. というように 「主語は自分(I)」 になりますが、ドイツ語では 「何か(例:dieses Buch / die Musik)」が「私(mir)に影響を与える」 という考え方になります。
ちなみに、料理や飲み物などの味が気に入った場合は、„Es schmeckt (mir).“ という表現を使うこともできます。
4. Mir fällt etwas ein. / Mir kommt etwas in den Sinn.
「思いつく」「ひらめく」といった表現もDativ(3格)を使った構文になります。
- „Mir fällt eine Idee ein.“(アイデアが浮かぶ)
- „Mir kommt ein Gedanke in den Sinn.“(考えが思い浮かぶ)
ここでも、アイデアや考えは「自分が生み出すもの」ではなく、「自分のところに降ってくるもの」として扱われるのです。

„Mir fällt eine Idee ein.“ という場合の最後の ein の言い忘れには注意が必要だよ!
5. Es tut mir leid.
「申し訳ない」「ごめんなさい」という意味の „Es tut mir leid.“ も、Dativを使う表現の一つです。
- „Es tut mir leid.“(それは私にとって苦しい → 申し訳ない)
この場合、「何か(es)」が「私(mir)」に対して申し訳ない気持ちを起こさせる という構造になっています。
「私は申し訳ない」という意味だからといって „Ich bin leid.“ とは言えません。
まとめ
ドイツ語には、「Dativ(3格)」を使うことで「自分に影響を与える」ことを表現する独特の構造があります。
今回紹介したものをまとめると、
・体調や感覚を表すもの
Mir ist kalt / heiß / schlecht / langweilig.(寒い / 暑い / 気分が悪い / 退屈だ)
Es geht mir gut / schlecht.(元気 / 調子が悪い)
Die Füße tun mir weh.(足が痛い)
Der Kopf tut mir weh.(頭が痛い)
・感情や思考を表すもの
Es gefällt mir.(気に入る)
Es schmeckt mir.(味が合う)
Mir fällt etwas ein.(何かを思いつく)
Es tut mir leid.(申し訳ない)
このような表現に慣れることで、より自然なドイツ語を話せるようになります!
最初は難しく感じるかもしれませんが、少しずつ使いながら慣れていきましょう!
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