ドイツで生活していると、日常的に多くのドイツ人の苗字に出会います。
Müllerさん、Schneiderさん、Fischerさん……その響きは日本人には少し馴染みが薄いかもしれませんが、実はそれぞれの苗字に興味深い由来や意味が込められています。
ドイツの苗字には、職業、出身地、身体的特徴など、様々な情報が隠されているのです。
本記事では、ドイツの苗字の歴史や分類、ランキング、そしてユニークな苗字まで、知っておくとほんの少しだけ得する苗字のトリビアを紹介します。
・ドイツの苗字に興味のある方
・ドイツに関する雑学に興味のある方
ドイツ人の苗字の基本と歴史
ドイツにおける苗字(Nachname、Familienname)の制度は中世から始まりました。
それ以前は、農村などでは個人名だけで十分でしたが、都市部の人口増加に伴って、同じ名前を持つ人を区別する必要が生まれました。
こうして、職業や住んでいた場所、身体的特徴などをもとに個人を識別するための苗字が広まり始めたのです。
本格的に姓が固定されたのは、おおよそ16~19世紀にかけて。
とくにナポレオン時代には、多くの地域で法的に苗字を名乗ることが義務付けられました。
現在のドイツでは、出生時に親の苗字を受け継ぐのが基本ですが、結婚や離婚などによって変更することも可能です。
苗字は公的な場では非常に重要で、ビジネスシーンでは「Herr Müller(ミュラー氏)」や「Frau Schneider(シュナイダー夫人)」のように、苗字を中心に呼びかけるのが基本です。
苗字の主な由来パターン
ドイツ人の苗字には、いくつかの代表的なパターンがあります。
以下にその主な分類と具体例を紹介します。
■ 職業に由来する苗字
- Müller(製粉業者):麦などを粉にする人。現在でも最も多い姓のひとつです。
- Schmidt(鍛冶屋):金属加工をしていた職人。英語の「Smith」に相当します。
- Fischer(漁師):川や湖で魚を獲っていた人々の姓です。
■ 地名や地理的特徴に由来する苗字
- Berger:Berg(山)に住んでいた人。
- Bach:小川のそばに住んでいた人。
- Hoffmann:Hof(農場)の主人、または農場で働く人。
■ 身体的特徴・性格に由来する苗字
- Klein(小さい):体格や身長に由来。
- Groß(大きい):Kleinと対になる名前です。
- Schwarz(黒)やWeiß(白):髪や肌の色に関係していた可能性があります。
■ 父称や家族関係に由来する苗字
- Peters:英語の「Peterson」に近く、「Peterの息子」に由来。
- Hansen:北ドイツでよく見られる、「Hansの子」に由来。
このように、苗字は一種の「個人のルーツの手がかり」とも言える存在です。
ドイツでよく見かける苗字ランキング(トップ10)
以下は、ドイツで特によく見かける苗字のランキングです。
それぞれの苗字の意味とともに紹介します。
| ランキング | 苗字 | 意味・由来 |
|---|---|---|
| 1位 | Müller | 粉ひき職人 |
| 2位 | Schmidt | 鍛冶屋 |
| 3位 | Schneider | 仕立て屋 |
| 4位 | Fischer | 漁師 |
| 5位 | Weber | 織物職人 |
| 6位 | Meyer | 農場の管理者、地方の首長 |
| 7位 | Wagner | 馬車職人、車輪職人 |
| 8位 | Becker | パン職人(Bäckerの古い表記) |
| 9位 | Schulz | 村の長、管理人 |
| 10位 | Hoffmann | 農場の管理人 |
※調査時期やサイトによって順位が多少異なりますが、トップ10に含まれる苗字はほぼ同じです。
※今回参考にしたサイトはこちら:https://www.volksstimme.de/deutschland-und-welt/die-zehn-haufigsten-nachnamen-im-land-944582
特筆すべきは、多くの苗字が職業に由来していることです。
中世の社会構造や職業の重要性が、現代にまで引き継がれているのが分かります。
面白い苗字・珍しい苗字
ドイツには実用的で由緒ある苗字が多い一方で、思わずクスッと笑ってしまうような苗字や、日本人にとってユニークに感じられる名前も少なくありません。
響きがユニークな苗字
- Fuchs(キツネ):日本語にすると動物の名前ですが、実際に存在する苗字。
- König(王様):由緒ある感じがしますが、非常に珍しいわけではありません。
- Feuerstein(火打石):やや古風ですが、印象的な響きです。
変な期待をされそうな苗字(日本語話者目線)
- Sauermann(ブタ男?)
- Faul(怠け者)
- Kleinpeter(小さいペーター)
- Lustig(面白い)
ただし、ドイツでは苗字はアイデンティティの一部であり、軽くからかったり笑ったりするのは避けるべきです。
本人たちにとってはごく普通の名前だからです。
また、東西ドイツの分断や地域差、移民の影響によって、トルコ系、ポーランド系、ロシア系などの姓も増えてきています。
例えば「Yilmaz」や「Nowak」などはそれに該当します。
苗字と文化:使い方や呼び方のマナー
ドイツ語圏では、日本と同じく「名字で呼び合う」文化が強く残っています。
ビジネスの場や初対面の際には、Herr(男性)+苗字 もしくは Frau(女性)+苗字で呼ぶのが基本です。
(例:Herr Schneider、Frau Müller など)
特に、お互いの間に大きな年齢差がある場合や、顧客と話す際には、親しくなるまではファーストネームで呼び合うことはあまりなく、「du(親しい「あなた」)」ではなく「Sie(丁寧な「あなた」)」を使います。
この文化的背景を知らないと、相手に無礼だと思われることもあるため注意が必要です。
ドイツ博士ただし、パーティーや大学で知り合ったり、友達の友達として知り合った場合などは、最初からファーストネームで呼び合い「du」を使うことも多いよ!



あと、スタートアップのような柔らかい社風の会社では、社内でのコミュニケーションの際に、年齢や役職に関係なくファーストネームで呼び合い「du」を使うこともあるよね。



結局は、周りの呼び方に合わせたり、相手が自分をどう呼ぶかで判断したりするのが一番安全だね!
また、ドイツでは、結婚の際にはどちらの姓を名乗るかを選べますし、夫婦がそれぞれ別の姓を持ち続けることも可能です。
夫婦別姓の場合、子どもには親のどちらかの姓をつけることになりますが、二重姓は禁止されています(例:Müller-Schmidtのようなものは不可)。
「苗字」から分かるドイツ社会と価値観
ドイツ人の苗字を見ていくと、いくつかの価値観が見えてきます。
特に顕著なのは、「仕事を重んじる文化」です。
現代でも最も多い姓のほとんどが中世の職業由来であることからも、ドイツ社会における「仕事の役割」「技術者・職人への敬意」がうかがえます。
また、地理由来の苗字からは、人々がかつての小さな村や地域社会を大切にしていたことも見て取れます。
つまり、ドイツの苗字は単なるラベルではなく、歴史と文化の縮図なのです。
最後に
ドイツ人の苗字には、その人の祖先の仕事、住んでいた場所、身体的特徴、時には性格までが織り込まれています。
一見すると難しい綴りや響きでも、その背景を知ることでドイツ語圏の文化や歴史がより身近に感じられるでしょう。
街中で出会う苗字に少しだけ注意を向けてみてください。
それだけで、ドイツでの生活が少し豊かになるかもしれません。


コメント