1990年の東西ドイツ統一からすでに30年以上が経過しました。
しかし、現在のドイツ社会を見てみると、「旧西ドイツ」と「旧東ドイツ」の間には、今もなお経済面・社会面で様々な格差が残っています。
旅行や生活を通じて、「何となく雰囲気が違う」と感じることがあるかもしれませんが、実際には具体的な数値にも違いが表れています。
今回は、そんなドイツの東西格差を「数字」で直感的に理解できるように紹介します。
- ドイツの東西格差の今の現状に少し興味のある方
現在の格差:数字が語るリアル
平均所得の差
ドイツの労働者の平均月収を比べると、旧西ドイツに比べて旧東ドイツの水準は依然として低くなっています。
2023年のデータを比較すると、
- 旧西ドイツ地域の平均月収(フルタイム・税引前):4,578ユーロ
- 旧東ドイツ地域の平均月収(フルタイム・税引前):3,754ユーロ
となっており、差は約820ユーロ(約22%)です。
※参考サイト:https://www.tagesschau.de/wirtschaft/arbeitsmarkt/lohnluecke-ost-west-100.html
失業率の違い
近年では失業率の差は縮まりつつあるものの、それでも旧東ドイツの一部地域では高止まりしている傾向があります。2024年のデータでは、
- 旧西ドイツ地域の失業率:5.7%
- 旧東ドイツ地域の失業率:7.5%
と、1.8%の差があります。
※参考サイト:https://www.bpb.de/kurz-knapp/zahlen-und-fakten/soziale-situation-in-deutschland/61718/arbeitslose-und-arbeitslosenquote/
特に、ザクセン=アンハルト州やメクレンブルク=フォアポンメルン州、ベルリン州では、他州に比べて高い水準が続いています。
賃貸・住宅価格の差
生活費の中でも大きな割合を占める家賃にも、東西で明確な差があります。
2023年のデータによれば、
- 旧西ドイツ地域(例:フランクフルト、ミュンヘン):1㎡あたり12〜22ユーロ
- 旧東ドイツ地域(例:ライプツィヒ、ドレスデン):1㎡あたり6〜9ユーロ
このように、旧東ドイツ地域では、旧西ドイツ地域のおおよそ半額近い水準でアパートを借りられる場合も多くあります。
※参考サイト:https://www.immowelt.de/ratgeber/news/mieten/mieten-in-ostdeutschland-warum-dein-einkommen-hier-mehr-wert-ist
ただし、近年では東部の一部都市(ライプツィヒなど)の人気が高まり、急速に上昇してきている点も注目されています。
経済力を示す指標:一人当たりGDP(域内総生産)
地域ごとの経済力を示す一人当たりのGDP(域内総生産)でも、差は歴然です。
2024年のデータでは、
- バイエルン州(西):58,817ユーロ
- バーデン=ヴュルテンベルク州(西):57,294ユーロ
- ノルトライン=ヴェストファーレン州(西):47,916ユーロ
- ザクセン州(東):39,667ユーロ
- ブランデンブルク州(東):37,774ユーロ
- ザクセン=アンハルト州(東):36,517ユーロ
と、最大で約20,000ユーロを超える差があります。
※参考サイト:https://de.statista.com/statistik/daten/studie/73061/umfrage/bundeslaender-im-vergleich-bruttoinlandsprodukt/
若者の人口流出と高齢化
旧東ドイツ地域では、若者が教育や就職の機会を求めて旧西ドイツ地域へ移動する傾向が続いており、人口減少と高齢化が同時かつ急速に進んでいます。
例えば、
- ザクセン=アンハルト州の人口は1990年から2023年にかけて約24%減少(2,873,957人→2,180,448人)
※参考サイト:https://de.statista.com/statistik/daten/studie/155169/umfrage/entwicklung-der-bevoelkerung-von-sachsen-anhalt-seit-1961/ - 2023年時点の旧東ドイツ地域の平均年齢は46.6歳で、旧西ドイツ地域の平均年齢43.3歳よりも2.3歳高い。
※参考サイト:https://de.statista.com/statistik/daten/studie/1559738/umfrage/durchschnittsalter-der-bevoelkerung-in-deutschland-nach-ost-west/
これにより、地域経済の活力にも影響が出ていると言われています。
最後に
ドイツは、国としては既に統一されていますが、経済的・社会的な意味での「統一」はまだ道半ばと言えるかもしれません。
格差の解消は一朝一夕ではなく、長期的な政策と地域の努力が必要です。
ただし、東部の都市でも新たなスタートアップや文化活動が盛んになるなど、ポジティブな動きも見られます。
私たち外国人としても、このような背景を理解することで、ドイツの社会をより深く知ることができ、実際の生活や人間関係にも少し役立つはずです。
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