海外に住んでいると、日本と外国での教育の違いが気になることもあると思います。
特にドイツで暮らす日本人にとっては、算数や数学において日本とドイツで違いがあることに日常生活の中で気づき、驚くことがあるかもしれません。
今回は、日本とドイツの算数の違いについてお話ししたいと思います。
日本にいる方にとっても、海外の教育の仕組みを知ることで視野が広がるかもしれません。
では、具体的に見ていきましょう!
- ドイツで留学予定の方
- 日本とドイツにおける算数や数学の違いに興味のある方
掛け算の順序が逆!?
まずは、掛け算の順序についてです。
例えば、以下のような簡単な問題があったとします。
問題:りんごを3個持った子供が4人います。りんごは合計でいくつありますか。
日本では、その問題を解くための式として、「3 × 4 = 12(= りんご3個 × 4人 = 12個)」と書くことが一般的です。
これは、4人が3個あるわけではなく、3個が4人分あるという考え方から来るのでしょう。
学校の授業で、掛け算の記号の前に来る数の単位と答えの単位が一致する必要があると習った人も多いのではないでしょうか。
しかし、ドイツでは逆に書くことが一般的なようです。
「4 × 3 = 12(= 4人 × りんご3個 = 12個)」というように、最初に人数を置いてから対象物(りんご)を掛けます。
日本人からすると、ちょっと気持ち悪い気がしますが、このような式をドイツではよく見かけます。
例えば、大手スーパーマーケットの広告に、ペットボトル飲料(各1L)の12本詰め合わせがお買い得商品として載っていたのですが、そこには「12 × 1L」と書いてありました。
日本であれば、恐らく1Lの物が12本あるという考え方から、「1L × 12」と書くのが一般的でしょう。

また、オンラインなどで筋トレのメニューをドイツ語で見ても、腕立て伏せを「3セット × 10回」などと書いてあります。
日本であれば、やはり「10回 × 3セット」と書くことが多いのではないでしょうか。

掛け算の式で順序が逆なのには、ドイツ生活が計5年ぐらいになってもまったく慣れないよ…。
掛け算の記号「×」の存在が薄い?
次に、掛け算の記号についてです。
日本の学校では、掛け算の際に「×」という記号を使うのが一般的です。
しかし、ドイツの学校では、「×」は日本ほど頻繁に使われません。
代わりに「⋅」(ドット)が使われることが多く、「*」(プログラミングでよく使われる記号)が用いられこともあります。
これは、ラテンアルファベットを使用するドイツ語において、掛け算の記号である「×」がアルファベットのX(エックス)と混同されることを避けるためでしょう。



ドイツでは、小学校などでも「⋅」が使われるようだよ!
例えば、先程と同じ以下の簡単な問題があったとします。
問題:りんごを3個持った子供が4人います。りんごは合計でいくつありますか。
この問題に対して、日本では「3 × 4 = 12」と式を書くのに対し、ドイツでは「4 × 3 = 12」と書くこともできますが、「4 ⋅ 3 = 12」と書くことが多くあります。
※式の順番が逆である点については、前の章をご覧ください。



あれ?でも、前の章で、ドイツの例を紹介してくれた時も「×」を使っていなかったっけ?



ドイツでも、「×」は使用されるよ!
でも、日本ほど頻繁に使われないよ!



あと、前章の例では、わかりやすくするために掛け算の記号を「×」で統一したよ!
割り算の記号「÷」はどこに行った?
割り算の記号についても、違いがあります。
日本では、割り算の際によく「÷」を使いますが、ドイツではほぼ見かけません。
ドイツでは、代わりに「:」や分数形式がよく使われます。
例えば、以下のような簡単な問題があったとします。
問題:30枚のクッキーを5人で平等に分けます。1人が受け取るクッキーは何枚ですか?
日本では、その問題を解くための式として、「30 ÷ 5 = 6(= クッキー30枚 ÷ 5人 = 6枚)」と書くことが一般的です。
その一方で、ドイツでは、「30 : 5 = 6(= クッキー30枚 ÷ 5人 = 6枚)」と書くことが多いのです。
もしくは、分数を使用して「30 / 5 = 6」(実際には、分母と分子を縦に重ねる)と式を書くこともあります。



割り算の記号が日独で違うことが分かった今でも、見るたびに一瞬戸惑うわ…。
筆算の書き方
小学校で習う「筆算の書き方」にも違いがあります。
特に割り算の筆算で、日本とドイツでは一般的な方法が異なっています。
例えば、以下のような問題があったとします。
問題:312を11で割った場合の商とあまりを求めましょう。
日本では、以下のように縦に長い形で計算することが一般的です。
割る数(11)が左にあり、商(28)が最も上にあり、あまり(4)が最も下に書かれます。


これに対して、ドイツでは、以下のように縦だけでなく横にも長い形で計算することが一般的です。
赤線で囲ったところに、日本との大きな違いが見られます。
割る数(11)が割られる数(312)の右にあり、商(28)がさらに右にあります。
その一方で、あまり(4)は日本と同じく最も下に書かれます。
そもそも、日本で割り算をする時にあまり使われない「:」という記号も登場しています。





結局は答えが求められればいいのかもしれないけど、ドイツ式のは縦にも横にも伸びていくから見づらいわ…。
小数点と桁区切りの点がややこしい!
ドイツで暮らし始めると、小数点の書き方にびっくりする瞬間が遠からずやってきます。
それは、日本では小数点に「.」を使用するのに対し、ドイツでは「,」を使用するからです。
例えば、円周率について、日本では「3.14」と書くのに対し、ドイツでは「3,14」と書きます。
さらに、桁の区切り方にも違いがあります。
大きな数字を3桁ずつ区切る際に、日本では「,」を使いますが、ドイツでは「.」を使用します。
例えば、千という数の場合、日本では「1,000」と書くのに対し、ドイツでは「1.000」と書くことが一般的です。
つまり、日本とドイツを比較すると、小数点と桁区切りの点を反対の意味で用いているのです。
ドイツにやってきた日本人は、これに混乱させられることが度々あるでしょう…。



両方の点を含むような場合、例えばテレビの値段が「1.276,80 €」と表記されている場合などは、一瞬違和感を感じるけど、最初の点を桁区切りの点、二番目の点を小数点であると脳が勝手に解釈することが多いからか、かえって混乱しないものだよ!
数字の手書きスタイルが違う?
数字の書き方にも、日本とドイツで違いがあります。
例えば、「7」に違いが見られます。
日本では、まさに「7」のように書いたり、「7」の左端にごく短い縦棒を1本加えて書いたりすることが一般的です。
その一方で、ドイツではこの「7」の真ん中に横線を1本加えるのが一般的です。
これは「1」と混同しないようにするための工夫です。
また、「1」にも違いが見られます。
日本では、「I」のように縦棒1本で書くことが多いでしょう。
その一方で、ドイツでは、上部に大きめの折れ線を加えてまさに「1」のように書くことが多くあります。
これは、アルファベットのI(アイ)と数字の「1」を区別しやすくするためです。


まとめ
・日本とドイツでは、掛け算の式の順序が反対である。
・日本でよく使われる掛け算の記号「×」はドイツでも使われるが、ドイツでは「⋅」も頻繁に使われる。
・割り算の記号「÷」はドイツでは使われず、代わりに「:」が使われる。
・割り算の問題を筆算を用いて解く際、日本は縦長になるが、ドイツは縦長にも横長にもなる。
・日本の小数点「.」と桁の区切りの点「,」が、ドイツでは正反対に使われる。
・数字を手書きで書く場合、日本とドイツの間では、例えば「1」や「7」に違いが見られる。
いかがでしたでしょうか?
日本とドイツの算数や数学における教育の違いは、文化や言語に根ざした考え方の違いを反映しています。
海外に住んでいると、こうした細かな違いに驚かされることが多いですが、それがまた面白いところです。
日本にいる方も、海外の教育システムを知ることで、違った視点から算数や数学を楽しめるかもしれません。
ドイツにいる方は、ぜひ現地の子どもたちや教師に話を聞いてみてください!
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