ドイツから日本に一時帰国すると、街の空気がどこか柔らかく感じられたり、店員さんの丁寧な仕草にホッとしたりする瞬間が多くあります。
日本出身の日本人としてドイツでしばらく暮らしてみると、サービスやマナーに対する両国の感覚の違いが際立ち、日本での生活の「心地良さの正体」が浮かび上がってきます。
全5回でお伝えする私がドイツから日本に一時帰国時した際に気づいたことですが、今回は、私がドイツ生活6年目の目線で感じた、日本の良きサービス・マナー・清潔文化について紹介したいと思います。
・ドイツでの生活に興味のある方
・ドイツから日本への一時帰国を予定している方
日本の接客の丁寧さから考えさせられるドイツでチップを払う意味
日本への一時帰国のたびに驚かされるのが、日本の接客の丁寧さです。
ドイツでは「サービスは基本無料で提供されないサービス」であり、チップはその対価の一部として支払う文化があります。
客がチップを支払わないと分かった途端、急に態度が冷たくなり対応が悪くなることすらあります。
しかし、日本では、チップの文化が存在しないにもかかわらず、それをはるかに上回るレベルの接客が当たり前のように行われています。
例えば、コンビニでのお会計。
お釣りの渡し方や商品を袋に入れる手つき、レジでの声かけ一つひとつに気配りが感じられます。
レストランでは、注文を取るときの姿勢、料理の提供のタイミング、皿の置き方や角度まで美しく整えられています。ちょっとした質問にもすぐに丁寧に答えてくれるため、初めて訪れたお店でも安心感が生まれます。

「なぜチップ文化のあるドイツよりも、日本の方がサービスが良いのか?」と考えると、答えがすぐには出ません。
それは単に慣習の違いだけでなく、「迷惑をかけない」「不快にさせない」「気持ちよく利用してもらう」という価値観が社会全体に根付いているからだと私は感じます。
日本およびドイツで接客を受けるたびに、この文化の奥深さを実感します。
日本人店員の立ち居振る舞いの美しさ
日本の店員さんの立ち振る舞い方や物の渡し方、声のトーンには、一種の美しさがあります。
ドイツでも丁寧な接客は存在しますが、特に日本のデパートや料亭のように、動作そのものの美意識まで意識されていることはほぼないです。
例えば、レジでお釣りを渡すときの手の添え方。
片手で渡すのではなく、両手で添えながら受け取りやすい位置に置く。
トレーの角度も受け取りやすく計算されており、微妙な角度や手の高さまで調整されています。
商品を扱うときも、乱暴に置いたり押し込んだりせず、そっと置くのが当たり前です。
接客という枠に含まれるかは微妙なところですが、日本の空港職員のスーツケースの取り扱いも非常に丁寧で、雑に投げられることはほぼありません。
こうした動作を仕事や日々の体験として繰り返すことで、接客の「美しさ」が無意識に身体に刻まれています。

さらに、丁寧な動作は単なる形ではなく、相手への強い気遣いを体現していることに気づかされます。
日本の接客は、相手を尊重する文化の一部であり、動作の美しさそのものが社会規範の一環として機能しています。
海外に実際に一度住んでみると、日本のこの点には非常に感動するようになります。
日本以上に清潔な国ってあるの?
日本の清潔さは、私のような外国に住んでいる日本人が日本へ帰国するたびに最も強く体感する部分です。
ドイツは、世界様々ある国の中でも清潔な好きな人が多い国だと思いますが、それでもドイツから日本へ帰国すると、日本の清潔さには毎回感動してしまいます。
無料公衆トイレの多さと綺麗さ
日本では、駅や街中にも多くのトイレがあり、それが無料かつ清潔に保たれていることに毎回驚かされます。
ドイツでは「トイレ=有料」が当たり前で、掃除の頻度も場所によって大きく異なります。
ドイツの方が悪臭が強いことが多く、トイレットペーパーや便座の蓋がないということも度々あります。
また、ドイツのスーパーマーケットには、顧客用のトイレが容易されていないことが一般的なので、スーパーマーケットに顧客用トイレがあることが普通だと思っている日本人は注意が必要です。
日本のトイレは、個室や便器の清潔さはもちろん、床や洗面台の衛生管理も行き届いており、手洗い場の水や石けんも清潔です。
日本に帰国して最初の1週間ぐらいは、駅やお店のトイレに入った瞬間、思わず感動してしまうことさえあります。

街中のゴミの少なさ
日本の街中のゴミの少なさも印象的です。
ドイツでは、人々がポイポイとそこら中にゴミを捨てるわけではありませんが、空き瓶や紙くず、たばこの吸い殻などのゴミが街中では目立ちます。
特に、たばこの吸い殻が石畳の隙間に大量に埋まっているのはよくあることで、それにより美しい景観が失われていることに非常に残念に感じます。

日本の街は、繁華街の夜こそゴミが気になりますが、日中はドイツよりも落ちているゴミの量が圧倒的に少なく見えます。
訪日外国人は、「日本の街では落ちているゴミが少ないけど、いったい誰がどのタイミングで掃除をしているんだろう…。」と気になっているようです。

列車内の清潔さ
日本では電車内でゴミを見かけることはほとんどなく、駅や施設も清潔な状態を保っています。
電車の座席やつり革もよごれが目立たず清潔です。
こうした清潔さは、社会全体で「公共空間をきれいに保つ」という意識が強く共有されているからこそ実現できることだと感じます。
ちなみに、ドイツでは、列車内でビール瓶や空き缶が転がっているのをよく見かけます。
中身が入った状態で転がっていることもあり、それがこぼれて床がベトベトになっているのもドイツでは日常茶飯事です…。

ゴミ箱の少なさとゴミ持ち帰り文化
先日もお伝えした通り、日本の街は清潔である一方、公共の場所に設置されているゴミ箱は驚くほど少ないです。
飲み物を手に持ち歩き、飲み終わった後に捨てる場所を探すことがありますが、意外と見つからないことが多いのです。
最近は、ゴミ箱の数がさらに減っているようで、駅やコンビニにも捨てる場所がなかったりします。
これは不便であり、訪日外国人の大きな悩みでもありますが、実は日本の清潔文化の一部とも考えられます。
多くの人が「自分が出したゴミは自分で持ち帰る」という習慣を徹底しているため、街中にゴミ箱が少なくても清潔さが保たれています。
この意識が徹底されているからこそ、ゴミ箱が見当たらなくてもポイ捨てされることが少なく、街全体の清潔感が維持されているのでしょう。

他者への気遣いが生み出す電車内の静けさ
日本の電車内は驚くほど静かで、特にドイツと比較すると大きな差があります。
ドイツでは、車内での大きな会話が目立ち、通話をしている人もいます。
人目を気にせず、ビールを飲みながらスピーカーから音楽を流して、勝手にパーティーのような雰囲気を作り出している騒がしいグループもいます。
また、サッカーの試合前後には、車内で応援歌を熱唱するサポーターも多く出現します
その一方で、日本の車内は、会話による騒音が少なく、全体として穏やかもしくは厳かな雰囲気です。
知り合いと一緒に乗車している場合は話すこともあるものの、ドイツほど大声で話す人は少なく、また通話をしたりスピーカーから音楽を流して聞いている人はほとんどいません。
そのため、ドイツから日本に一時帰国をして電車に乗ると、日本では他人への配慮が徹底していると強く感じます。
この公共の場での静けさが、日本における街全体の秩序や快適さを作り出しているのでしょう。

最後に
日本の街で感じる心地良さは、偶然の産物ではなく、文化として根付いた多くの人の「配慮」の積み重ねによって生まれています。
サービスの丁寧さ、マナーの良さ、清潔さ、公共のルールの徹底。
これらはすべて、他者への思いやりと社会的意識の表れなのでしょう。
ドイツと日本を行き来する中で、こうした文化の違いや幅広さを体感することは、私にとって旅行や観光では味わえない深い学びになっています。
帰国するたびに、街の何気ない空気の柔らかさや秩序、整然とした美しさに感動し、日本の社会の良い面を改めて実感しています。

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