ドイツにある、少し静かで一風変わったスーパーマーケット「tegut…(テグート)」。
外観はごく普通のスーパーマーケットにも見えるのに、店内に一歩入ると、どこか穏やかで不思議な空気に包まれます。
棚に並ぶ商品は、Bio(オーガニック)認証のマークが目立ち、パッケージも落ち着いたデザインばかり。
レジ周りの混雑も少なく、買い物というより「生活を整える時間」を過ごしているような感覚でした。
今回は、そんなtegut…を実際に訪れた体験をもとに、その特徴と魅力についてご紹介します。
- ドイツ在住で、オーガニック食品に興味のある方
- ドイツのスーパーマーケットに興味のある方
tegut…とは?
tegut…は、ドイツ中部・ヘッセン州フルダ(Fulda)で生まれたスーパーマーケットチェーンです。
創業は1947年。
元々は地域に根付く小さな食料品店でしたが、「gute Lebensmittel verantwortungsvoll handeln(良い食品を責任を持って取り扱う)」を理念に、いち早くオーガニック食品や地元生産者の製品を扱うようになったことで知られるようになりました。

現在ではドイツ中部や南部を中心に約300店舗を展開し、その多くでBio(有機)商品を豊富に取りそろえています。
大手チェーンのような派手な広告や値引き合戦はほとんどなく、むしろ「静かで誠実なスーパーマーケット」といった印象です。
一部の店舗では、無人で24時間営業する小型店舗「tegut… teo」など、新しい買い物スタイルも試みています。
こうした取り組みには、「便利さ」だけでなく、「信頼」「地域性」「持続可能性」を大切にするドイツ的な考え方が反映されています。
店内の雰囲気とデザイン
私が訪れたのは、ミュンヘン市内にある中規模のtegut…店舗でした。
入口の自動ドアを抜けると、まず感じるのはなんといっても「静けさ」です。
BGMはまったくなく、照明は柔らかく、鮮やかな装飾もほとんど目に入ってきません。
商品の陳列も整然としており、全体的に空間に余裕があるため、買い物客同士の距離も自然と広がります。

日本のスーパーマーケットのように「広告の品!」と書かれた大きなポップが並ぶこともなく、人によってはパッとしない店内に見えるかもしれません。
レジ周辺も落ち着いていて、スタッフの接客もどこかゆったり。
そのせいか、視界には常に数人の客しか一度に入らず、買い物というよりも「選ぶ時間をのんびり楽しむ場」のように感じられました。
疑問ちゃんあの客の少なさで、儲けが出ているのか気になるけどね…。


外の喧騒を忘れて、丁寧に並べられたBio野菜を手に取ると、「暮らしを豊かにする」というtegut…の理念が空間全体から伝わってくるようでした。


商品ラインナップと価格感
棚をゆっくり見て回ると、tegut…が「オーガニック志向のスーパーマーケット」と呼ばれる理由がすぐにわかります。
野菜や果物の多くにはBioマークが付けられ、袋詰めではなく量り売りで販売されているものも多くあります。
パッケージはシンプルで、色味を抑えた落ち着いたデザインが中心です。
チーズやハム、パンなども自社ブランドのBio商品が多く、ベーカリーコーナーには焼きたての有機全粒粉パンがずらりと並んでいました。


印象的だったのは、その品質の高さと同時に感じる「価格の高さ」です。
一般的なスーパー(REWEやLidlなど)と比べると、同じ種類の商品でも2〜3割ほど高いことが多く、手軽にまとめ買いするような感覚ではありません。
ただ、商品の一つひとつがしっかりと作られていて質が高く、生鮮食品を中心に産地がきちんと表記されています。


この値段のためか、店内は他のスーパーよりも静かで、どこか落ち着いた大人の客層が多い印象です。
日々の大量消費のための買い物というより、「少し良いものを丁寧に選ぶ」。
そんな買い物スタイルが自然に根づいているように見えました。
無人店舗「tegut… teo」などの新しい取り組み
tegut…はもう一つのユニークな挑戦を進めています。
それが、小型無人店舗「tegut… teo(テグート・テオ)」です。
これは住宅街や地方の小さな町に設置された24時間営業のミニスーパーマーケットで、スマートフォンのアプリで店舗のドアを開け、キャッシュレス決済で商品を購入できる仕組みです。
レジもなくスタッフもいないのに、棚にはBio食品や日用品が整然と並び、まるで小さなコンビニのよう。
一見すると無機質に思えますが、実際には「信頼」というドイツ的な価値観に支えられています。
地域の住民が互いに顔見知りで、買い物客がルールを守ることを前提に成り立つシステム。
効率化の中にも温かみがあり、「人に依存しすぎず、でも人を信じる」というバランスが感じられることでしょう。
「tegut… teo」は、人口減少が進む小さな町の生活インフラとしても注目されています。
訪れて感じたこと・日本との違い
tegut…の店内を歩いていて最も印象に残ったのは、「静けさ」でした。
それは単に人が少ないという意味だけではなく、買い物という行為そのものが落ち着いていて、生活の一部として自然に溶け込んでいるということ。
急いでカゴを満たすのではなく、一つひとつの商品を確かめながら選ぶ。
その余裕が、空間にも、買い物客の表情にも表れていました。


ドイツではオーガニックや地産地消が生活に根付いており、値段よりも品質や持続可能性を重視する人が多くいます。
多くのスーパーマーケットが「いかに安く・早く・便利に」を追求しているのに対し、tegut…では「いかに心地よく・誠実に・地球に優しく」が基準になっているように思えました。
買い物を通じて、自分の暮らし方や価値観を見つめ直す。
tegut…は、そんな時間を与えてくれる場所です。


最後に
tegut…は、ただのスーパーマーケットではありません。
そこには、生活をより良くしようとする人々の誠実な姿勢と、自然との共生を大切にするドイツの文化が息づいています。
派手な広告も、にぎやかな音もない。
けれど、静かな棚の間に並ぶBio商品の一つひとつが、「丁寧に暮らす」というメッセージを語りかけてくるようでした。
旅の途中にふらっと立ち寄るだけでも、その空気に触れることができるでしょう。
ドイツを訪れる機会があれば、ぜひtegut…の店内をゆっくり歩いてみてください。
きっと、買い物という日常の中にある「小さな豊かさ」を感じられるはずです。


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