ドイツ転職市場のリアル:求人激減×世界経済リスク

2024年秋、2025年春と、私はドイツで転職活動をせざるを得ない状況に陥りました。
しかし、その活動は想像以上に厳しく、求人は少なく、応募しても音沙汰がないかお祈りメールが送られてくる…。

日本でもニュースで報道されているようですが、「ヨーロッパ経済の冷え込み」と「世界情勢の不安定化」が、ここドイツでの転職市場にも大きく影を落としています。

本記事では、私自身の経験も交えながら、2025年7月現在のドイツ転職市場の実態をお伝えします。

この記事は、こんな人におすすめ!
  • ドイツで働くことに興味のある方
  • ドイツに長期滞在し、正社員として働きたいと考えている方
  • ドイツの転職市場の現況が気になる方
目次

ドイツの転職市場の現況

2024年から2025年にかけて、ドイツの労働市場は大きな変化に直面しています。
一見すると大きな問題には至っていないように見えますが、実際の転職市場では、求人件数の減少や採用活動の鈍化が目立っています。

ドイツ連邦雇用庁(Bundesagentur für Arbeit)によれば、2025年6月時点の失業率は6.2%で、失業者数は約291.4万人です。
2024年6月の5.8%、2023年6月の5.5%と比べると増加しており、製造業や建設業、IT関連分野で特に厳しさが報告されています。
※参考サイト:www.arbeitsagentur.de/news/arbeitsmarkt
※参考サイト:www.destatis.de/DE/Themen/Wirtschaft/Konjunkturindikatoren/Arbeitsmarkt/arb210a.html

また、2025年6月23日の報道(ロイター通信)によると、ドイツ産業連盟(BDI)は、2025年の経済成長率を「マイナス0.3%」に下方修正しました。
これは、2023年、2024年に続くマイナス成長および事実上の景気停滞を意味しており、企業は新規採用を慎重に行わざるを得ない状況にあるのです。
※参考サイト:https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7OSBSSDJ3FMWJHTQ7AAKCUNX4Y-2025-06-23/

求人件数の減少も深刻です。
ドイツ連邦雇用庁(Bundesagentur für Arbeit)の最新データによると、2025年6月時点で公開されている求人件数は約63.2万件にとどまり、前年同月よりも大幅に減少しています。
ちなみに、2024年6月時点では約69.3万件、2023年6月時点では約76.1万件、2022年6月時点では約86.7万件の求人があったため、ここ数年間毎年10%前後求人の数が減っていることになります。
※参考サイト:https:/statistik.arbeitsagentur.de/DE/Navigation/Statistiken/Fachstatistiken/Gemeldete-Arbeitsstellen/Aktuelle-Eckwerte-Nav.html

これは「人材不足」ではなく、「企業側の採用意欲そのものの減退」を示しています。

特に影響を受けているのは中小企業で、経済の不透明感により、ポジションを凍結または削減するケースが増えています。

私の転職活動体験談

私自身、2024年8月下旬から10月下旬、そして2025年3月上旬から5月中旬の計2回、ドイツで転職活動をせざるを得ない状況に陥りました。
その時の経験を、以下で体験談としてご紹介したいと思います。

転職活動体験談1(2024年秋)

転職活動のきっかけ

2022年から2024年まで約2年間正社員として働いたドイツのスタートアップ企業から、2024年8月に解雇通告を受け取ったためです。
その会社は経営難により、2022年、2023年にも大量解雇を行っており、三度目となる2024年の大量解雇で私も他の同僚と共に解雇対象になってしまいました。

その時の退職通知期間は15日または月末から2ヶ月間であったため、2024年10月15日付での解雇を告げられました。

求人の探し方

まず、直近数ヶ月以内にLinkedInでヘッドハンティングのメッセージをくれた方々に、返信または再連絡し、今もそのポジションや類似ポジションに空きがあるか確認しました。

次に、LinkedInIndeedに投稿されている求人情報を見て、応募条件に80%以上当てはまり自分の経験が活かせそうな求人に積極的に応募しました。

また、LinkedIn上で、積極的に新たな仕事を探していることをアピールしたことにより、新たに約5人の(クライアント企業のために候補者を探している)リクルーターからメッセージをもらうことができました。
そのリクルーター達と比較的カジュアルな面談をしたうえで、私の能力や条件に合いそうな求人が見つかり次第私に連絡するようお願いしました。

転職活動の状況

ロシア・ウクライナ間の長引く戦争やドイツ経済の先行き不安などが影響し、転職市場はどんよりとしていました。
LinkedInやIndeed上に新規求人はあるものの、数は決して多くありませんでした。

また、リクルーターから応募を勧められた企業は、ネット上での評判が悪いところが多く、正直いまいちでした。

それでも結局計25社ぐらい応募し、4社と面接をすることができました。

結果

LinkedIn経由だったかIndeed経由だったか忘れてしまいましたが、自ら求人情報を見つけ応募した企業から、2024年10月下旬の退職通知期間が終わってすぐのタイミングで、3回の面接の末、内定をもらうことができました!

その会社から提示された給与は、私の経験やスキル、そして推定される業務内容と責任範囲を考慮すると、市場において一般的な水準であると推測できたこともあり、快くその内定を受諾しました。

結局、失業した期間は4週間程度であり、長い期間失業者となることを無事回避することができました。
失業手当を受給していたものの、それだけでは毎月の収支が赤字であったため、経済的な面でも安心しました。

転職活動体験談2(2025年春)

転職活動のきっかけ

2024年11月に入社した会社から、試用期間中である2025年2月末に突然解雇通告を受け取ったため、再度転職活動をせざるを得ない状況に陥りました。

当時の上司から解雇理由を説明してもらったものの、私の納得のいくものではまったくありませんでした。
ただし、会社の経営難というのも大きな理由一つでした(それならなぜ私を雇ったのかと腹が立ちましたが…)。

その時の退職通知期間は、試用期間中につき2週間であったため、2025年3月中旬での解雇を言い渡されました。

求人の探し方

今回は、LinkedInとIndeed経由での自らの応募が中心でした。
以下の「転職活動の状況」でも述べている通り、2025年春の転職活動時は2024年秋の転職活動時と異なり、リクルーターやヘッドハンター側から積極的に声を掛けてもらえませんでした。

2024年秋など以前お世話になったリクルーターに再度連絡を取り、私に合いそうな空きポジションがないか確認するのも一つの手でしたが、それはあえてしませんでした。
というのも、リクルーターを通して応募しても、何のフィードバックもアップデートもしてくれないことが多いと学んでしまったからです。

LinkedInやIndeedからの応募に加えて、この時はInitiativbewerbungというものを数社に対してしました。Initiativbewerbungとは、特定のポジションに対して応募するのではなく、特定の企業に履歴書等の応募書類を送りつけて、その企業内に適切な空きポジションがないか確認してもらう方法です。

中には一般公開していない求人もあるため、企業の公式サイトなどで自分に合う求人が見つからない場合でも、その企業が気になる場合は、Initiativbewerbungをして運試しをしてみる価値はあると思います。

転職活動の状況

2024年秋の転職活動時と大きく違ったのが、解雇通告受領前の数ヶ月間に私にコンタクトしてくれたリクルーターやヘッドハンターの数です。
2024年秋の時は10人近くいたのですが、今回は1人だけでした。
また、LinkedIn上で、積極的に新たな仕事を探していることをアピールしても、リクルーターやヘッドハンター側からの反応は基本ありませんでした。

もちろん、短期間での再転職活動が原因の一つでもあったと思います。
しかし、それを差し引いても声を掛けてもらえた数が非常に少なかったのは、ドイツの経済状況が2024年秋よりもさらに悪化したからだと思います。

この転職市場の異常な厳しさは、LinkedInやIndeedを見ても明らかでした。
2024年秋の転職活動時と同じく、LinkedInとIndeedに投稿されている求人情報を確認しましたが、検索しても表示される求人の件数が、2024年秋と比べて半分もありませんでした
また、求人の半分ぐらいは2024年秋の時にも見たものであり、積極的に採用していないと思われる企業のものでした。

それでも、応募条件に80%以上該当し自分の経験が活かせそうな求人には積極的に応募しました。

結局2ヶ月半で計15社ぐらい応募したのですが、結局Initiativbewerbungで自ら積極的に応募した企業1社からしか面接に招待してもらえませんでした。
同時期に転職活動をしていた人を複数知っているのですが、やはり皆さん非常に苦戦していたようで、状況は似たり寄ったりでした。

結果

Initiativbewerbungをし面接に呼んでくれた唯一の企業から、7回の面接の末に内定をもらうことができました!
自分のこれまでの経験やスキルが活かせそうなこと、会社の評判も良く、採用選考で知り合った人が皆気さくだったことなどから、すぐに内定を受諾しました。
転職市場が凍りついた非常に厳しい状況であったため、良い条件でその会社から内定をもらえた時は、本当に嬉しかったと同時に安心しました!

なぜ「今」が特に厳しいのか

2025年7月現在のドイツの転職市場が特に厳しいとされる背景には、いくつかの大きな要因が重なっています。

世界情勢の不安定さ

まず大きな要因として挙げられるのが、地政学的リスクです。
ウクライナ戦争の長期化、中東地域の緊張、そして米国でのトランプ政権の再登場などにより、世界経済全体に不確実性が広がっています。
この影響で多くの企業は投資・採用に慎重になり、特に外国人採用については後ろ向きになる傾向があります。

ドイツ経済の構造的問題

加えて、ドイツ国内経済も2024年以降停滞の様相を強めています。
エネルギー価格の高止まり、輸出依存型産業の低迷、インフレの影響などにより、企業経営は圧迫され、求人の数自体が絞られています。

2025年5月、ドイツ経済諮問委員会(「五賢人委員会」)も公式に「2025年の実質GDP成長率を0.0%」との予測を出しており、景気回復の兆しは見えづらい状況です。
※参考サイト:https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/3c82ea8b09b96517.html

IT業界などでの「過剰採用の反動」

また、コロナ禍以降に急成長を遂げたIT・テクノロジー業界では、2023年から2024年の間に大量採用を行った反動が出ており、2025年は「一旦採用を止めて整理を進める」フェーズに入っています。
この影響も、特にホワイトカラー職の求人数の減少に繋がっています。

日本人・外国人の視点からできる対策

では、こうした困難な状況の中で、日本人や外国人求職者ができることはあるのでしょうか?
一応、いくつかの工夫やアプローチで選考突破の可能性を高めることは可能です。

求人探しの手段を多様化する

IndeedやLinkedInなどの大手求人ポータルは便利ですが、現在のように求人が少ない時期には、求人情報が古く更新されていないケースもあります。
以下のような代替手段の活用もおすすめします。

Initiativbewerbung:特定のポジションではなく、気になる企業に対して履歴書等の応募書類を送り、企業内に適切なポジションがないか確認してもらう方法。これで面接に呼ばれる可能性は決して高くないですが、一般公開していない求人の話を持ちかけられる場合も。

ドイツ語の転職ポータル(StepStone、Jobbörse.deなど):特にローカル企業は、ドイツに強いプラットフォームで、ドイツ語の求人広告で募集している場合も多い。

日系人材紹介会社の活用:ドイツにいながら日系企業で働くことにも興味がある場合は、在独日系企業を顧客としてビジネスを行っている人材紹介会社にコンタクトを取ったり、登録したりするのも有効です。

応募書類を「ドイツ式」に最適化する

書類選考で落とされるケースが多い場合、CVやカバーレターのスタイルを見直すことも重要です。
特に:

  • 顔写真付きのCV(Lebenslauf)
  • 証明書の添付
  • 志望動機を明確に書いたカバーレター(Anschreiben)

は、ドイツの就職・転職市場では今も重視される傾向があります。

なお、ドイツでの就職を狙う場合の履歴書の書き方は、以下の記事で詳しく解説していますので、そちらも参考にしていただければ幸いです。

ネットワーキングを強化する

実際に転職成功者から話を聞くと、「知人の紹介」や「イベントで出会った人を通じて」求人にたどり着いたというケースも珍しくありません。
オンラインで求人情報を探すだけでなく、現地の業界イベントジョブセミナーなどへの参加も有効です。

まとめ

2025年7月現在のドイツ転職市場は、明らかに求職者にとって「売り手市場」ではありません。
世界経済の不透明感、ドイツ経済の停滞、そして企業の採用抑制…
そのすべてが重なり、これまで以上に厳しい局面にあります。

しかし、そんな中でも転職を成功させている人がいるのもまた事実です。
現実を直視しながら、以下のような姿勢が今後ますます重要になってくるでしょう:

・情報収集のルートを広げ、求人に出会う「確率」を上げる
・応募書類の見直し、ドイツでの採用文化を理解する
・複数回にわたる長期戦を覚悟し、心を折られないこと
・必要に応じて「一時的に希望条件を下げる」柔軟さも持つ

最後に、私自身の体験から一つだけ伝えたいのは、「諦めないことの大切さ」と「面接準備の大切さ」です。
厳しい市場だからこそ、粘り強さと事前対策が鍵になる…
それを信じて、読者の皆さんが少しでも前進できることを願っています!

ゆとり
ドイツ生活6年目のゆとりです。デュッセルドルフで2年半働き、現在は再度ミュンヘンで働いています。過去にミュンヘンで交換留学およびワーホリも体験しました。
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