ドイツに住み始めると、突然「Rundfunkbeitrag(ルントフンクバイトラーク)」という謎の請求書が届くことがあります。
これはドイツの公共放送に関わる費用で、日本でいう「NHK受信料」のような存在です。
仕組みや支払い対象、金額、免除の条件などを知らないと、思わぬトラブルや未払い扱いになることも。
この記事では、ドイツ生活に欠かせないこの制度について、わかりやすく解説します。
・ドイツでRundfunkbeitragの請求書を初めて受け取った方
・ドイツへ引っ越したばかりの方、もしくはドイツへ引っ越す予定の方
Rundfunkとは?
「Rundfunk(ルントフンク)」とは、ドイツにおける公共放送の総称です。
日本でいうNHKのような存在ですが、運営されている放送局は複数あり、代表的なものにはARD、ZDF、Deutschlandradioなどがあります。
これらは国からの直接的な資金援助を受けず、放送の中立性と政治的独立性を保つために、国民からの受信料(Rundfunkbeitrag)で運営されています。
テレビやラジオ番組だけでなく、オンライン上で提供されるメディアコンテンツ(ニュース、教育番組、文化情報など)もRundfunkの対象に含まれます。
つまり、スマートフォンやパソコンを持っているだけでも、間接的に放送を「受信できる」と見なされるため、全世帯に対して公平に課金される仕組みが採用されています。
Rundfunkbeitrag(公共放送受信料)の概要
Rundfunkbeitrag(公共放送受信料)は、ドイツに住んでいる人すべてが原則支払うべき受信料です。
2025年5月現在、その金額は月額18.36ユーロで、通常は3か月ごとに一括で55.08ユーロが請求されます。
この受信料は、テレビやラジオの有無に関係なく、「1つの住居につき1件分」発生します。
つまり、たとえ一人暮らしでテレビを持っていなくても、ドイツに住んでいる限り支払う必要があります。
逆に、家族と同居しているなど同居人がいる場合は、そのうちの誰か1人が支払っていればOKです。
ドイツに新しく引っ越してきた場合、引っ越し後数週間以内に郵送で請求書が届くことが一般的です。
しかし、必ずしも自動で請求書が届くとは限らないため、可能であれば自分でRundfunkの公式サイト(https://www.rundfunkbeitrag.de/)から登録すると、後々スムーズに事が進みます。

正直、テレビもラジオもなく、ドイツの公共放送のコンテンツに触れることのまったくない人にとっては、腹立たしい制度だけどね…。
誰が払う?WGや学生寮の場合は?
ドイツでは「住居単位」で課金されるため、どのような居住形態でも、誰が支払うかの取り決めが必要です。
以下のようなケースが考えられます:
一人暮らしの場合
自分自身が支払い義務者になります。
ただし、大家やメインテナントなどとの間に結んだ契約によっては、賃借人である自分ではなく、大家やメインテナントが支払い義務者になることもあります。
シェアハウス(WG)の場合、同居人がいる場合
住居全体で1件分の支払いを行えばオッケーです。
そのため、フラットメイトや同居人と話して誰が代表して支払うかを決め、その人物が登録します。
実際の支払いは住人全員で割り勘しても問題ありませんが、公式には代表者が責任を負います。
学生寮(Studentenwohnheim)の場合
これは寮の構造によって異なるため、個別の確認が必要です。
自分が住んでいる部屋の入り口が、誰でも通れる公共の道路や廊下に面している場合は、専用のキッチンやバスルームがあるかにかかわらず、それぞれが個別に支払う必要があります。
ただし、シェアハウス(WG)のように、公共の道路や廊下に面しているドアの内側にさらに内廊下があり、その内廊下に面して個別の部屋への入り口がある場合は、全体で1件分の請求となるケースもあるようです。
なお、生活保護(Bürgergeld)受給者や一定の障害を持つ方は、免除申請を行えばRundfunkbeitragを支払わなくて済む場合があります。
条件を満たす場合は、忘れずに申請書類を提出しましょう。
支払い方法と手続き
Rundfunkbeitragの支払いは、基本的に3か月ごとの前払い方式で行われます(通常、1月・4月・7月・10月の初旬に請求)。
以下のような支払い方法が利用可能です:
- 口座引き落とし(Lastschrift)
最も一般的で便利な方法です。
登録時に銀行口座情報(IBAN)を入力すれば、自動的に支払いが行われ、滞納の心配がありません。 - 振込(Überweisung)
請求書に記載された口座情報とVerwendungszweck(Beitragsnummer / 登録番号)を使って、自分で送金します。
ただし、支払い忘れが起こりやすいので注意が必要です。
ドイツへ新しく引っ越してきた場合、もしくドイツ国内で引っ越しをした場合は、自分でRundfunkの公式サイト(https://www.rundfunkbeitrag.de/)から新規登録もしくは登録情報の変更を行い、フォームを送信する必要があります。
ドイツへ新しく引っ越してきた場合に、数週間登録をしないでおくと、Rundfunkの方から郵送で請求書が届くことが一般的です。
引っ越し・帰国・免除のときの対処法
引っ越しや帰国などで、もはや受信料の支払い義務がなくなる場合は、必ず解約(Abmeldung)手続きが必要です。
これをしないと、引き続き請求書が届いたり、自動的な講座引き落としが続いてしまいます。
解約の主な理由として認められているのは以下の通り:
- ドイツ国外への転出(例:日本への帰国)
- 他の人が既にその住居の分を支払っている(例:新しい同居人が支払者になる、もしくは自分はサブテナントでありメインテナントが支払者であるなど)
- 住居が空き家になる
- 生活保護・Bürgergeldの受給開始による免除申請
解約申請も、Rundfunkの公式サイト(https://www.rundfunkbeitrag.de/)からオンラインで可能です。
退去証明書(Abmeldebestätigung)や転出証明(Abmeldebescheinigung)、新しい住民票(Meldebescheinigung)、新しい賃貸契約書などの書類をPDFで添付する必要があります。
よくある誤解と注意点
Rundfunkbeitragに関しては、特にドイツ生活に不慣れな人にとって、いくつかの誤解が生まれがちです。
以下のポイントは押さえておきましょう:
・テレビやラジオがないからといって、支払いを免れることはできない:
Rundfunkbeitragは「受信機器の有無」に関係なく、住居に対して課されます。
たとえテレビを持っていなくても、インターネット接続が可能なスマホやPCがあれば「受信可能」と判断されます。
・複数の住居があると、それぞれに請求が来ることがある:
たとえば別荘や別宅を持っている場合、それぞれに対して支払い義務が発生する場合があります。
・請求書を無視していると延滞金が加算される:
Rundfunkbeitragは法的に義務がある支払いです。
無視し続けていると、督促状(Mahnung)が届き、延滞金(Säumniszuschlag)が発生したり、最終的には口座の差し押さえにつながるケースもあります。
最後に
ドイツで生活するうえで、Rundfunkbeitrag(公共放送受信料)は避けて通れない費用のひとつです。
「テレビを見ないから関係ない」と考えがちですが、ドイツの制度では住居単位で公平に課金される仕組みになっています。
面倒に思えるかもしれませんが、支払い方法を一度設定してしまえば手間はかかりません。
また、引っ越しや帰国時に正しく手続きをすれば、余計な請求も防げます。
制度を正しく理解して、スムーズなドイツ生活を送りましょう!
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