ドイツといえば、効率的で正確な公共交通機関のイメージが強い国として知られています。
しかし、実際にDeutsche Bahn(ドイツ鉄道)が運行する高速列車に乗ると、日本人として驚くことが少なくありません。
特に、遅延や速度に関しては、日本の新幹線と比較すると大きな違いが見えてきます。
この記事では、ドイツの高速列車、特にICEやICについて、日本で生まれ育った日本人の視点からその現状を考察してみたいと思います。
・ドイツで暮らし始めた方、もしくは近々ドイツへ引っ越す予定のある方
・ドイツの列車事情に興味のある方
駅間での突然かつ頻繁な減速や停車
ドイツの高速列車、特にICE(InterCity Express)やIC(InterCity)に乗ると、駅間で減速したり突然停車したりすることが頻繁にあります。
日本の新幹線では、ほぼ一定の速度で駅と駅の間を走行することが一般的ですが、ドイツではそのようなスムーズな運行が保証されていないことが多いです。
これは、日本の新幹線と異なり、ドイツでは高速列車の専用線の整備が進んでおらず、在来線と共用している区間が多いことが原因の一つです。
加えて、ドイツでは、駅間で信号待ちや他の列車との調整が頻繁に発生します。
これにより、予定された走行速度を維持することが難しくなり、遅延の一因となっているのです。
日本の新幹線では、専用の高速線路が整備され、他のローカル列車と干渉することがほとんどないため、このような減速や停車は非常にまれです。
始発駅出発時に既に遅延!?
日本人が驚くもう一つのポイントは、ドイツの列車が始発駅を出発する時点で既に遅れていることが度々あることです。
日本の新幹線では、列車が始発駅を定刻通りに出発するのが当たり前であり、たとえ数分の遅れが発生したとしても、すぐに放送やアナウンスで乗客に通知されます。
一方、ドイツでは、出発時に数分もしくはそれ以上の遅れがほとんど告知されずに進行し、その後の遅延がさらに拡大することもしばしばです。
遅延についてすぐにアナウンスされないのには困ったものですが、出発が遅れている時は、他の列車との兼ね合いが影響していることが多いです。
他の列車との兼ね合いとは、例えば、近い距離に他の列車が走行しており、安全性の観点から出発できないという状況です。
また、遅れている列車から乗り継ぎを行う乗客を待つために、始発駅での出発が遅れることも度々です。
駅での停車時間が長すぎる…
ドイツの高速列車は、駅での停車時間が比較的長い傾向にあります。
日本の新幹線では、多くの場合1〜2分程度で乗客の乗降が完了し、すぐに出発します。
これは、新幹線のプラットフォームや乗降システムが非常に効率的に設計されているためです。
しかし、ドイツでは各駅での停車が長くなることが多く、3分以上の停車が一般的です。
特別混雑する駅でないのにもかかわらず、5分以上停車することもあります。
ドイツでは、日本と異なり、整列乗車をする習慣が一般的にありません。
それゆえに、駅での乗客の乗降により時間が掛かってしまうのかもしれません。
また、日本の新幹線よりも乗車位置がわかりづらいことが多いです。
その結果として、待っていた位置に列車が停車しなかったり、予約した席のある車両が待っていた位置に停車しなかったりすることがよくあります。
そのため、慌てて走って移動し乗車する客を度々見かけます。
これも、ドイツの高速鉄道において、駅での停車時間が長くなる原因の一つかもしれません。
ノロノロ走行するドイツの高速列車
「ドイツの高速列車は300km/hで走る」と聞いたことがある人は多いかもしれません。
しかし、実際に300km/hの速度を出せる区間はごくわずかです。
理論上は、ICEをはじめとするドイツの高速列車も300km/hで走行可能ですが、その速度に達する区間は限られています。
大部分の区間では200〜250km/h程度の速度、もしくはそれ以下の速度でノロノロと走行しています。
一方、日本の新幹線は、ほぼ全線で260〜320km/hの速度を維持できる専用線が整備されており、最高速度に近い状態で運行できる区間が広範囲にわたります。
これは、ドイツの列車が新幹線ほどの一貫した高速運行を重視していないことや、大半の区間で既存のローカル線用のインフラを利用しているためです。
少し古い情報ですが、以下の外部サイトで、ドイツ国内において200km/h以上で走行できる区間が図で示されています。
参考サイト:http://www.wiki-info.de/bahn-verbindungen-ice/ice-hochgeschwindigkeitsstrecken.htm
カーブが多すぎて速度を出せない!?
ドイツの高速列車が最高速度を維持できないもう一つの理由は、線路のカーブの多さにあります。
ドイツでは、昔からある既存の路線網をベースにしているため、カーブの多い区間も多く存在します。
これに対して、日本の新幹線は、直線的なルートが優先的に設計されており、高速運転を可能にする線形が採用されています。
カーブが多い区間では必然的に速度を落とさざるを得ないため、ドイツでは期待される高速運行が難しい状況です。
カーブが連続するエリアでは速度制限がかかり、思ったように加速できないケースが多々あります。
まとめ
- ドイツでは、駅間での減速や停車が頻繁に起こる
- ドイツでは、始発駅を出発する時点で既に遅れていることが度々ある
- ドイツの高速列車は、駅での停車時間が長め
- ドイツの高速列車が300km/hで走行できる区間は、ごく限られている
- ドイツの高速列車の線路は、カーブが多い
- ドイツでは高速列車の専用線の整備が進んでおらず、在来線と共用している
ドイツの高速列車、特にICEやICは、ヨーロッパ内では高い評価を得ているものの、日本の新幹線と比較すると、頻繁な遅延や減速、停車時間の長さが目立ちます。
また、最高速度に達することができる区間が限られているため、実際には「高速列車」としてのパフォーマンスにやや物足りなさを感じることも少なくありません。
それでも、ドイツの鉄道システムには柔軟性や国際的な連携の面で優れた点が多く、旅行者やビジネスパーソンにとっては便利な交通手段であることに変わりはありません。
とはいえ、日本人の目線から見ると、ドイツの鉄道の速度や運行の正確さには改善の余地があるように感じられるのも事実です。
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